FTC、競業避止義務条項の禁止を提言
Publications
2023年2月
By: Jason M. Bradford, Debbie Berman, Andrew W. Vail, Joseph Torres, Casey L.M. Carlson
FTC、バイデン大統領の大統領令後の沈黙を破る
2023年1月5日、連邦取引委員会(FTC)は、広範な新規則を提言した。当該規則が現状のドラフトの内容で施行された場合には、既に効力を有している契約を含めて実質的に全ての競業避止義務契約が禁止されることになる。FTCのこの動きは、FTCに対して競業避止義務や「労働力の可動性を不公平に制限するその他の条項や契約」[1]を制限する規則を制定するよう指示したバイデン大統領の2021年7月の大統領に対応するものである。DOJとFTCは、近時競業避止義務やその他の制限的コベナンツについて訴訟やその他の執行手続を行ってきていたものの[2]、FTCは、この大統領令に関して、規則を制定してはいなかった。それが今週になって、FTCが「不公平な競争方法に関する規則」と題するサブチャプターを発表し、新パート910「競業避止義務条項」の中の5つの条項を提示したことで変化した[3],[4]。
提案された新規則は、60日間のパブリックコメントにかけられている[5]。関心のある企業はその期間内にコメントを提出することができる。コメント期間が終了した後、FTCは、規則を最終版にまとめ、最終版が公表されてから180日後に規則が発効される。
新規則案は、想定された以上に広範
新規則案では、競業避止義務について強硬なアプローチがとられている。「競業避止義務条項」は法外に不公平なものであるとされ、かかる条項は「雇用主と労働者との間の契約条件のうち労働者が雇用主との間の労働関係が終了した後に求職や就職を行うことまたは事業を運営することを妨げる条項」[6]と広範に定義されている。本規則案では、同様の効果を発生させる回避策も禁止されている。例えば、本規則案では、労働者が同業界で働くことを実質的に妨げる秘密保持契約が具体的に禁止されており、また、その労働者のトレーニングのためにかかった費用と関連しない支払いとなる場合に、雇用主がトレーニングコストの払い戻しを求めることが禁止されている。
さらに、本規則案では、雇用主に対して、違反の残る全ての競業避止義務条項を失効させるとともに、従業員や元従業員に当該条項は失効した旨の通知を行う義務が課されている[7]。本規則では、 その通知のモデル文が定められているが[8]、通知により労働者に競業避止義務条項が失効しており、労働者に対して執行できないものになっていることを知らせるものである限り、雇用主は、自由に通知文を決めることができる。重要な点は、雇用主に対して、本規則の発効日の前に現従業員と元従業員に通知を行う義務を課している、という点である。
競業避止義務を規制しようとする各州の試みとは異なり[9]、FTCの提案する規則は、事業売却に関連する競業避止義務について単一の例外しか設けていない。そして、その例外は、大多数の主要なM&A契約で使われる条項よりも極めて範囲が狭い例外となっている。競業避止義務は企業の実質的所有者・構成員についてのみ許容されており、その範囲は、事業体の25%超の支配権を有する者、と定義されている。これにより一定期間シニアオフィサーが買収対象会社の競合先で働くことを禁止するといった、主要な公開企業の取引で用いられている競業避止義務条項が利用できなくなる。
法的問題など広範な規則に対する反発が見込まれる
本規則案による禁止範囲の広範さは多くの人を驚かせるものであり、本規則案は、法的問題に直面する可能性が高い。注目すべき点としては、FTCの3人の委員が本規則案に賛成した一方で、クリスティン・S・ウィルソン委員は「何百年もの裁判例から大きく逸脱するもの」であり、「裁判所が合法であると判断してきた行為を禁止するもの」[10]と述べ、競業避止義務を分析するには、明確なルール作りよりも事実関係に即した検討の方が適切である旨強調するとともに、業界の競合先に雇用されても活用できるトレーニングを提供するインセンティブを雇用主に与えるなど、競業避止義務条項のもたらす利益を指摘し、これに反対した[11]。
さらに、本規則案は、連邦最高裁判所がWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)で射程を拡大した重要問題法理(major questions doctrine)の近時の発展を受けて、効力を争われる可能性が高い。本件で裁判所は、行政当局による「重要問題」について規則を制定する権限について検討した。具体的には、裁判所は、規制力につき「議会による明確な授権」がない限り、行政当局は「重要な政策決定」や「大きな経済的・政治的な影響を与える決定」をする規則を制定することはできない、と判断した[12]。FTCは、本規則案を発出するにあたり、連邦取引委員会法セクション5を持ち出している[13]。このセクションは、FTCが「人、パートナーシップや会社が通商において不公平な競争方法を用い、通称において不公平または欺瞞的な行為や実務慣行をとることを防ぐ」[14]ための権限を与えるものである。「不公平な競争方法」こそがまさに本規則案が定める歴史的な政策変更に必要な「議会による明確な授権」を欠いている文言である、と主張している。
まとめ
FTCの新規則案は、大きな法的問題に直面する可能性が高いが、伝統的に競業避止義務条項を用いてきた企業は、現従業員や元従業員に競業避止義務条項が失効した旨を新規則の発効日より前に伝えなければならないという雇用主の義務に対応できるよう、準備を始めるべきである。
この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
新規則案は、想定された以上に広範
新規則案では、競業避止義務について強硬なアプローチがとられている。「競業避止義務条項」は法外に不公平なものであるとされ、かかる条項は「雇用主と労働者との間の契約条件のうち労働者が雇用主との間の労働関係が終了した後に求職や就職を行うことまたは事業を運営することを妨げる条項」[6]と広範に定義されている。本規則案では、同様の効果を発生させる回避策も禁止されている。例えば、本規則案では、労働者が同業界で働くことを実質的に妨げる秘密保持契約が具体的に禁止されており、また、その労働者のトレーニングのためにかかった費用と関連しない支払いとなる場合に、雇用主がトレーニングコストの払い戻しを求めることが禁止されている。
さらに、本規則案では、雇用主に対して、違反の残る全ての競業避止義務条項を失効させるとともに、従業員や元従業員に当該条項は失効した旨の通知を行う義務が課されている[7]。本規則では、 その通知のモデル文が定められているが[8]、通知により労働者に競業避止義務条項が失効しており、労働者に対して執行できないものになっていることを知らせるものである限り、雇用主は、自由に通知文を決めることができる。重要な点は、雇用主に対して、本規則の発効日の前に現従業員と元従業員に通知を行う義務を課している、という点である。
競業避止義務を規制しようとする各州の試みとは異なり[9]、FTCの提案する規則は、事業売却に関連する競業避止義務について単一の例外しか設けていない。そして、その例外は、大多数の主要なM&A契約で使われる条項よりも極めて範囲が狭い例外となっている。競業避止義務は企業の実質的所有者・構成員についてのみ許容されており、その範囲は、事業体の25%超の支配権を有する者、と定義されている。これにより一定期間シニアオフィサーが買収対象会社の競合先で働くことを禁止するといった、主要な公開企業の取引で用いられている競業避止義務条項が利用できなくなる。
法的問題など広範な規則に対する反発が見込まれる
本規則案による禁止範囲の広範さは多くの人を驚かせるものであり、本規則案は、法的問題に直面する可能性が高い。注目すべき点としては、FTCの3人の委員が本規則案に賛成した一方で、クリスティン・S・ウィルソン委員は「何百年もの裁判例から大きく逸脱するもの」であり、「裁判所が合法であると判断してきた行為を禁止するもの」[10]と述べ、競業避止義務を分析するには、明確なルール作りよりも事実関係に即した検討の方が適切である旨強調するとともに、業界の競合先に雇用されても活用できるトレーニングを提供するインセンティブを雇用主に与えるなど、競業避止義務条項のもたらす利益を指摘し、これに反対した[11]。
さらに、本規則案は、連邦最高裁判所がWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)で射程を拡大した重要問題法理(major questions doctrine)の近時の発展を受けて、効力を争われる可能性が高い。本件で裁判所は、行政当局による「重要問題」について規則を制定する権限について検討した。具体的には、裁判所は、規制力につき「議会による明確な授権」がない限り、行政当局は「重要な政策決定」や「大きな経済的・政治的な影響を与える決定」をする規則を制定することはできない、と判断した[12]。FTCは、本規則案を発出するにあたり、連邦取引委員会法セクション5を持ち出している[13]。このセクションは、FTCが「人、パートナーシップや会社が通商において不公平な競争方法を用い、通称において不公平または欺瞞的な行為や実務慣行をとることを防ぐ」[14]ための権限を与えるものである。「不公平な競争方法」こそがまさに本規則案が定める歴史的な政策変更に必要な「議会による明確な授権」を欠いている文言である、と主張している。
まとめ
FTCの新規則案は、大きな法的問題に直面する可能性が高いが、伝統的に競業避止義務条項を用いてきた企業は、現従業員や元従業員に競業避止義務条項が失効した旨を新規則の発効日より前に伝えなければならないという雇用主の義務に対応できるよう、準備を始めるべきである。
この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
[1] Biden Administration Announces Plans to Curtail Non-compete Agreements for Workers (July 12, 2021), https://jenner.com/library/publications/21119.
[2] See, e.g., Latest Decisions in Criminal No-Poach and Civil Non-Compete Cases Indicate Continuing Scrutiny of Restrictive Covenants (July 12, 2022), https://www.jenner.com/en/news-insights/publications/client-alert-latest-decisions-in-criminal-no-poach-and-civil-non-compete-cases-indicate-continuing-scrutiny-of-restrictive-covenants; Department of Justice Prosecutions in Employment-Related Antitrust Suits Fall Flat in Davita, Inc. and Jindal (Apr. 27, 2022), https://jenner.com/library/publications/21770; DOJ Continues to Push Against Non-Competes, Non-Solicitations, and Other Post-Employment Restrictions (Mar. 1, 2022), https://jenner.com/library/publications/21633参照。
[3] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[4] 同日、FTCは、競業避止義務条項による15 U.S.C.A. § 45の違反を主張して一連の執行行為を開始した。本件は、申立てがなされた直後に同意審決がなされた。
[5] Noam Scheiber, “U.S. Moves to Bar Noncompete Agreements in Labor Contracts,” The New York Times (Jan. 5, 2023), https://www.nytimes.com/2023/01/05/business/economy/ftc-noncompete.html.
[6] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[7] 同上
[8] 同上。これに関連して、本規則の§ 910.2(b)(2)(C)は、以下の文言を推奨している。「たとえ[雇用主名]と競合しようとも、どのような会社や個人に求職・就職することも可能です。たとえ[雇用主名]と競合しようとも、自ら事業を営むことも可能です。[雇用主名]との雇用関係終了後はいつでも[雇用主名]と競合することが可能です。」
[9] 競業避止義務条項の執行力を制限する州法は多岐にわたるが、多くの場合高賃金労働者についての例外規定が設けられている(イリノイ州(820 ILCS 90)、ワシントン州(RCW 49.62.020)など)。その他の場合、ガーデン休暇と組み合わせた競業避止義務の例外規定が設けられている(マサチューセッツ州(Mass. Gen. Laws, ch. 149, § 24L)など)。
[10] この点につき、ウィルソン委員は、第7巡回区の訴訟であるSnap-On Tools Corp. v. Fed. Trade Comm’n, 321 F.2d 825 (7th Cir. 1963)を引用した。この事案では、競業避止義務条項などの制限的コベナンツは「時
[11] Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson Regarding the Notice of Proposed Rulemaking for the Non-Compete Clause Rule, Federal Trade Commission, Commission File No. P201200-1 (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/p201000noncompetewilsondissent.pdf. See also, Commissioner Wilson’s Dissenting Statements in three enforcement actions against companies with non-competes announced January 4, 2023 (Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of O-I Glass, Inc. and In the Matter of Ardagh Group S.A., Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0182 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson-dissenting-statement-glass-container-cases.pdf; Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of Prudential Security, Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0026 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson_dissenting_statement_-_prudential_security_-_final_-_1-3-23.pdf) も参照されたい。
[12] West Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022).
[13] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[14] 15 U.S.C.A. § 45.
Footnotes
[1] Biden Administration Announces Plans to Curtail Non-compete Agreements for Workers (July 12, 2021), https://jenner.com/library/publications/21119.
[2] See, e.g., Latest Decisions in Criminal No-Poach and Civil Non-Compete Cases Indicate Continuing Scrutiny of Restrictive Covenants (July 12, 2022), https://www.jenner.com/en/news-insights/publications/client-alert-latest-decisions-in-criminal-no-poach-and-civil-non-compete-cases-indicate-continuing-scrutiny-of-restrictive-covenants; Department of Justice Prosecutions in Employment-Related Antitrust Suits Fall Flat in Davita, Inc. and Jindal (Apr. 27, 2022), https://jenner.com/library/publications/21770; DOJ Continues to Push Against Non-Competes, Non-Solicitations, and Other Post-Employment Restrictions (Mar. 1, 2022), https://jenner.com/library/publications/21633参照。
[3] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[4] 同日、FTCは、競業避止義務条項による15 U.S.C.A. § 45の違反を主張して一連の執行行為を開始した。本件は、申立てがなされた直後に同意審決がなされた。
[5] Noam Scheiber, “U.S. Moves to Bar Noncompete Agreements in Labor Contracts,” The New York Times (Jan. 5, 2023), https://www.nytimes.com/2023/01/05/business/economy/ftc-noncompete.html.
[6] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[7] 同上
[8] 同上。これに関連して、本規則の§ 910.2(b)(2)(C)は、以下の文言を推奨している。「たとえ[雇用主名]と競合しようとも、どのような会社や個人に求職・就職することも可能です。たとえ[雇用主名]と競合しようとも、自ら事業を営むことも可能です。[雇用主名]との雇用関係終了後はいつでも[雇用主名]と競合することが可能です。」
[9] 競業避止義務条項の執行力を制限する州法は多岐にわたるが、多くの場合高賃金労働者についての例外規定が設けられている(イリノイ州(820 ILCS 90)、ワシントン州(RCW 49.62.020)など)。その他の場合、ガーデン休暇と組み合わせた競業避止義務の例外規定が設けられている(マサチューセッツ州(Mass. Gen. Laws, ch. 149, § 24L)など)。
[10] この点につき、ウィルソン委員は、第7巡回区の訴訟であるSnap-On Tools Corp. v. Fed. Trade Comm’n, 321 F.2d 825 (7th Cir. 1963)を引用した。この事案では、競業避止義務条項などの制限的コベナンツは「時
[11] Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson Regarding the Notice of Proposed Rulemaking for the Non-Compete Clause Rule, Federal Trade Commission, Commission File No. P201200-1 (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/p201000noncompetewilsondissent.pdf. See also, Commissioner Wilson’s Dissenting Statements in three enforcement actions against companies with non-competes announced January 4, 2023 (Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of O-I Glass, Inc. and In the Matter of Ardagh Group S.A., Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0182 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson-dissenting-statement-glass-container-cases.pdf; Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of Prudential Security, Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0026 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson_dissenting_statement_-_prudential_security_-_final_-_1-3-23.pdf) も参照されたい。
[12] West Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022).
[13] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[14] 15 U.S.C.A. § 45.
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2023年2月
By: Jason M. Bradford, Debbie Berman, Andrew W. Vail, Joseph Torres, Casey L.M. Carlson
FTC、バイデン大統領の大統領令後の沈黙を破る
2023年1月5日、連邦取引委員会(FTC)は、広範な新規則を提言した。当該規則が現状のドラフトの内容で施行された場合には、既に効力を有している契約を含めて実質的に全ての競業避止義務契約が禁止されることになる。FTCのこの動きは、FTCに対して競業避止義務や「労働力の可動性を不公平に制限するその他の条項や契約」[1]を制限する規則を制定するよう指示したバイデン大統領の2021年7月の大統領に対応するものである。DOJとFTCは、近時競業避止義務やその他の制限的コベナンツについて訴訟やその他の執行手続を行ってきていたものの[2]、FTCは、この大統領令に関して、規則を制定してはいなかった。それが今週になって、FTCが「不公平な競争方法に関する規則」と題するサブチャプターを発表し、新パート910「競業避止義務条項」の中の5つの条項を提示したことで変化した[3],[4]。
提案された新規則は、60日間のパブリックコメントにかけられている[5]。関心のある企業はその期間内にコメントを提出することができる。コメント期間が終了した後、FTCは、規則を最終版にまとめ、最終版が公表されてから180日後に規則が発効される。
新規則案は、想定された以上に広範
新規則案では、競業避止義務について強硬なアプローチがとられている。「競業避止義務条項」は法外に不公平なものであるとされ、かかる条項は「雇用主と労働者との間の契約条件のうち労働者が雇用主との間の労働関係が終了した後に求職や就職を行うことまたは事業を運営することを妨げる条項」[6]と広範に定義されている。本規則案では、同様の効果を発生させる回避策も禁止されている。例えば、本規則案では、労働者が同業界で働くことを実質的に妨げる秘密保持契約が具体的に禁止されており、また、その労働者のトレーニングのためにかかった費用と関連しない支払いとなる場合に、雇用主がトレーニングコストの払い戻しを求めることが禁止されている。
さらに、本規則案では、雇用主に対して、違反の残る全ての競業避止義務条項を失効させるとともに、従業員や元従業員に当該条項は失効した旨の通知を行う義務が課されている[7]。本規則では、 その通知のモデル文が定められているが[8]、通知により労働者に競業避止義務条項が失効しており、労働者に対して執行できないものになっていることを知らせるものである限り、雇用主は、自由に通知文を決めることができる。重要な点は、雇用主に対して、本規則の発効日の前に現従業員と元従業員に通知を行う義務を課している、という点である。
競業避止義務を規制しようとする各州の試みとは異なり[9]、FTCの提案する規則は、事業売却に関連する競業避止義務について単一の例外しか設けていない。そして、その例外は、大多数の主要なM&A契約で使われる条項よりも極めて範囲が狭い例外となっている。競業避止義務は企業の実質的所有者・構成員についてのみ許容されており、その範囲は、事業体の25%超の支配権を有する者、と定義されている。これにより一定期間シニアオフィサーが買収対象会社の競合先で働くことを禁止するといった、主要な公開企業の取引で用いられている競業避止義務条項が利用できなくなる。
法的問題など広範な規則に対する反発が見込まれる
本規則案による禁止範囲の広範さは多くの人を驚かせるものであり、本規則案は、法的問題に直面する可能性が高い。注目すべき点としては、FTCの3人の委員が本規則案に賛成した一方で、クリスティン・S・ウィルソン委員は「何百年もの裁判例から大きく逸脱するもの」であり、「裁判所が合法であると判断してきた行為を禁止するもの」[10]と述べ、競業避止義務を分析するには、明確なルール作りよりも事実関係に即した検討の方が適切である旨強調するとともに、業界の競合先に雇用されても活用できるトレーニングを提供するインセンティブを雇用主に与えるなど、競業避止義務条項のもたらす利益を指摘し、これに反対した[11]。
さらに、本規則案は、連邦最高裁判所がWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)で射程を拡大した重要問題法理(major questions doctrine)の近時の発展を受けて、効力を争われる可能性が高い。本件で裁判所は、行政当局による「重要問題」について規則を制定する権限について検討した。具体的には、裁判所は、規制力につき「議会による明確な授権」がない限り、行政当局は「重要な政策決定」や「大きな経済的・政治的な影響を与える決定」をする規則を制定することはできない、と判断した[12]。FTCは、本規則案を発出するにあたり、連邦取引委員会法セクション5を持ち出している[13]。このセクションは、FTCが「人、パートナーシップや会社が通商において不公平な競争方法を用い、通称において不公平または欺瞞的な行為や実務慣行をとることを防ぐ」[14]ための権限を与えるものである。「不公平な競争方法」こそがまさに本規則案が定める歴史的な政策変更に必要な「議会による明確な授権」を欠いている文言である、と主張している。
まとめ
FTCの新規則案は、大きな法的問題に直面する可能性が高いが、伝統的に競業避止義務条項を用いてきた企業は、現従業員や元従業員に競業避止義務条項が失効した旨を新規則の発効日より前に伝えなければならないという雇用主の義務に対応できるよう、準備を始めるべきである。
この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
新規則案は、想定された以上に広範
新規則案では、競業避止義務について強硬なアプローチがとられている。「競業避止義務条項」は法外に不公平なものであるとされ、かかる条項は「雇用主と労働者との間の契約条件のうち労働者が雇用主との間の労働関係が終了した後に求職や就職を行うことまたは事業を運営することを妨げる条項」[6]と広範に定義されている。本規則案では、同様の効果を発生させる回避策も禁止されている。例えば、本規則案では、労働者が同業界で働くことを実質的に妨げる秘密保持契約が具体的に禁止されており、また、その労働者のトレーニングのためにかかった費用と関連しない支払いとなる場合に、雇用主がトレーニングコストの払い戻しを求めることが禁止されている。
さらに、本規則案では、雇用主に対して、違反の残る全ての競業避止義務条項を失効させるとともに、従業員や元従業員に当該条項は失効した旨の通知を行う義務が課されている[7]。本規則では、 その通知のモデル文が定められているが[8]、通知により労働者に競業避止義務条項が失効しており、労働者に対して執行できないものになっていることを知らせるものである限り、雇用主は、自由に通知文を決めることができる。重要な点は、雇用主に対して、本規則の発効日の前に現従業員と元従業員に通知を行う義務を課している、という点である。
競業避止義務を規制しようとする各州の試みとは異なり[9]、FTCの提案する規則は、事業売却に関連する競業避止義務について単一の例外しか設けていない。そして、その例外は、大多数の主要なM&A契約で使われる条項よりも極めて範囲が狭い例外となっている。競業避止義務は企業の実質的所有者・構成員についてのみ許容されており、その範囲は、事業体の25%超の支配権を有する者、と定義されている。これにより一定期間シニアオフィサーが買収対象会社の競合先で働くことを禁止するといった、主要な公開企業の取引で用いられている競業避止義務条項が利用できなくなる。
法的問題など広範な規則に対する反発が見込まれる
本規則案による禁止範囲の広範さは多くの人を驚かせるものであり、本規則案は、法的問題に直面する可能性が高い。注目すべき点としては、FTCの3人の委員が本規則案に賛成した一方で、クリスティン・S・ウィルソン委員は「何百年もの裁判例から大きく逸脱するもの」であり、「裁判所が合法であると判断してきた行為を禁止するもの」[10]と述べ、競業避止義務を分析するには、明確なルール作りよりも事実関係に即した検討の方が適切である旨強調するとともに、業界の競合先に雇用されても活用できるトレーニングを提供するインセンティブを雇用主に与えるなど、競業避止義務条項のもたらす利益を指摘し、これに反対した[11]。
さらに、本規則案は、連邦最高裁判所がWest Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022)で射程を拡大した重要問題法理(major questions doctrine)の近時の発展を受けて、効力を争われる可能性が高い。本件で裁判所は、行政当局による「重要問題」について規則を制定する権限について検討した。具体的には、裁判所は、規制力につき「議会による明確な授権」がない限り、行政当局は「重要な政策決定」や「大きな経済的・政治的な影響を与える決定」をする規則を制定することはできない、と判断した[12]。FTCは、本規則案を発出するにあたり、連邦取引委員会法セクション5を持ち出している[13]。このセクションは、FTCが「人、パートナーシップや会社が通商において不公平な競争方法を用い、通称において不公平または欺瞞的な行為や実務慣行をとることを防ぐ」[14]ための権限を与えるものである。「不公平な競争方法」こそがまさに本規則案が定める歴史的な政策変更に必要な「議会による明確な授権」を欠いている文言である、と主張している。
まとめ
FTCの新規則案は、大きな法的問題に直面する可能性が高いが、伝統的に競業避止義務条項を用いてきた企業は、現従業員や元従業員に競業避止義務条項が失効した旨を新規則の発効日より前に伝えなければならないという雇用主の義務に対応できるよう、準備を始めるべきである。
この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
[1] Biden Administration Announces Plans to Curtail Non-compete Agreements for Workers (July 12, 2021), https://jenner.com/library/publications/21119.
[2] See, e.g., Latest Decisions in Criminal No-Poach and Civil Non-Compete Cases Indicate Continuing Scrutiny of Restrictive Covenants (July 12, 2022), https://www.jenner.com/en/news-insights/publications/client-alert-latest-decisions-in-criminal-no-poach-and-civil-non-compete-cases-indicate-continuing-scrutiny-of-restrictive-covenants; Department of Justice Prosecutions in Employment-Related Antitrust Suits Fall Flat in Davita, Inc. and Jindal (Apr. 27, 2022), https://jenner.com/library/publications/21770; DOJ Continues to Push Against Non-Competes, Non-Solicitations, and Other Post-Employment Restrictions (Mar. 1, 2022), https://jenner.com/library/publications/21633参照。
[3] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[4] 同日、FTCは、競業避止義務条項による15 U.S.C.A. § 45の違反を主張して一連の執行行為を開始した。本件は、申立てがなされた直後に同意審決がなされた。
[5] Noam Scheiber, “U.S. Moves to Bar Noncompete Agreements in Labor Contracts,” The New York Times (Jan. 5, 2023), https://www.nytimes.com/2023/01/05/business/economy/ftc-noncompete.html.
[6] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[7] 同上
[8] 同上。これに関連して、本規則の§ 910.2(b)(2)(C)は、以下の文言を推奨している。「たとえ[雇用主名]と競合しようとも、どのような会社や個人に求職・就職することも可能です。たとえ[雇用主名]と競合しようとも、自ら事業を営むことも可能です。[雇用主名]との雇用関係終了後はいつでも[雇用主名]と競合することが可能です。」
[9] 競業避止義務条項の執行力を制限する州法は多岐にわたるが、多くの場合高賃金労働者についての例外規定が設けられている(イリノイ州(820 ILCS 90)、ワシントン州(RCW 49.62.020)など)。その他の場合、ガーデン休暇と組み合わせた競業避止義務の例外規定が設けられている(マサチューセッツ州(Mass. Gen. Laws, ch. 149, § 24L)など)。
[10] この点につき、ウィルソン委員は、第7巡回区の訴訟であるSnap-On Tools Corp. v. Fed. Trade Comm’n, 321 F.2d 825 (7th Cir. 1963)を引用した。この事案では、競業避止義務条項などの制限的コベナンツは「時
[11] Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson Regarding the Notice of Proposed Rulemaking for the Non-Compete Clause Rule, Federal Trade Commission, Commission File No. P201200-1 (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/p201000noncompetewilsondissent.pdf. See also, Commissioner Wilson’s Dissenting Statements in three enforcement actions against companies with non-competes announced January 4, 2023 (Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of O-I Glass, Inc. and In the Matter of Ardagh Group S.A., Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0182 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson-dissenting-statement-glass-container-cases.pdf; Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of Prudential Security, Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0026 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson_dissenting_statement_-_prudential_security_-_final_-_1-3-23.pdf) も参照されたい。
[12] West Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022).
[13] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[14] 15 U.S.C.A. § 45.
Footnotes
[1] Biden Administration Announces Plans to Curtail Non-compete Agreements for Workers (July 12, 2021), https://jenner.com/library/publications/21119.
[2] See, e.g., Latest Decisions in Criminal No-Poach and Civil Non-Compete Cases Indicate Continuing Scrutiny of Restrictive Covenants (July 12, 2022), https://www.jenner.com/en/news-insights/publications/client-alert-latest-decisions-in-criminal-no-poach-and-civil-non-compete-cases-indicate-continuing-scrutiny-of-restrictive-covenants; Department of Justice Prosecutions in Employment-Related Antitrust Suits Fall Flat in Davita, Inc. and Jindal (Apr. 27, 2022), https://jenner.com/library/publications/21770; DOJ Continues to Push Against Non-Competes, Non-Solicitations, and Other Post-Employment Restrictions (Mar. 1, 2022), https://jenner.com/library/publications/21633参照。
[3] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[4] 同日、FTCは、競業避止義務条項による15 U.S.C.A. § 45の違反を主張して一連の執行行為を開始した。本件は、申立てがなされた直後に同意審決がなされた。
[5] Noam Scheiber, “U.S. Moves to Bar Noncompete Agreements in Labor Contracts,” The New York Times (Jan. 5, 2023), https://www.nytimes.com/2023/01/05/business/economy/ftc-noncompete.html.
[6] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[7] 同上
[8] 同上。これに関連して、本規則の§ 910.2(b)(2)(C)は、以下の文言を推奨している。「たとえ[雇用主名]と競合しようとも、どのような会社や個人に求職・就職することも可能です。たとえ[雇用主名]と競合しようとも、自ら事業を営むことも可能です。[雇用主名]との雇用関係終了後はいつでも[雇用主名]と競合することが可能です。」
[9] 競業避止義務条項の執行力を制限する州法は多岐にわたるが、多くの場合高賃金労働者についての例外規定が設けられている(イリノイ州(820 ILCS 90)、ワシントン州(RCW 49.62.020)など)。その他の場合、ガーデン休暇と組み合わせた競業避止義務の例外規定が設けられている(マサチューセッツ州(Mass. Gen. Laws, ch. 149, § 24L)など)。
[10] この点につき、ウィルソン委員は、第7巡回区の訴訟であるSnap-On Tools Corp. v. Fed. Trade Comm’n, 321 F.2d 825 (7th Cir. 1963)を引用した。この事案では、競業避止義務条項などの制限的コベナンツは「時
[11] Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson Regarding the Notice of Proposed Rulemaking for the Non-Compete Clause Rule, Federal Trade Commission, Commission File No. P201200-1 (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/p201000noncompetewilsondissent.pdf. See also, Commissioner Wilson’s Dissenting Statements in three enforcement actions against companies with non-competes announced January 4, 2023 (Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of O-I Glass, Inc. and In the Matter of Ardagh Group S.A., Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0182 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson-dissenting-statement-glass-container-cases.pdf; Dissenting Statement of Commissioner Christine S. Wilson, In the Matter of Prudential Security, Federal Trade Commission, Commission File No. 211-0026 (Jan. 4, 2023), https://www.ftc.gov/system/files/ftc_gov/pdf/wilson_dissenting_statement_-_prudential_security_-_final_-_1-3-23.pdf) も参照されたい。
[12] West Virginia v. EPA, 142 S. Ct. 2587 (2022).
[13] Non-Compete Clause Rulemaking, Federal Trade Commission (Jan. 5, 2023), https://www.ftc.gov/legal-library/browse/federal-register-notices/non-compete-clause-rulemaking.
[14] 15 U.S.C.A. § 45.
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