SEC・CFTC、暗号資産業界の統合的監督を目的とする「Project Crypto」を始動

2026年1月29日、米国証券取引委員会(SEC)および米国商品先物取引委員会(CFTC)は、「Project Crypto」の開始を共同で発表した。本プロジェクトは、2025年にSEC内部の取組みとして立ち上げられた構想を発展させ、デジタル資産規制を米国全体で統合することを目的とする省庁間連携へと拡張されたものである。この共同プロジェクトは、デジタル資産業界の長年にわたる2 つの構造的問題((1)特定のプロダクトについてどの当局が管轄権を有するのかという恒常的な不透明性、(2)規制当局間の縄張り争いにより市場参加者が板挟みに遭う状況)に正面から対応するものである。SECとCFTCは、共通の規制フレームワークを構築することで、監督の合理化、重複規制の削減、そして米国の暗号資産市場に対する機関投資家の信認向上を目指している。本プロジェクトは、暗号資産取引所、取引プラットフォーム、ソフトウェア開発者、機関投資家を含む幅広い市場参加者に影響を及ぼすと見込まれる。

ポイント

  • SECとCFTCは、暗号資産規制を統合する共同プロジェクト「Project Crypto」を開始し、長年続いてきた管轄権の混乱および当局間対立の解消を目指す。
  • 本プロジェクトには、共通の資産分類、協調的な監督体制、暗号資産事業者に対するコンプライアンスの合理化が含まれる。
  • 当面の優先事項には、トークン化担保に関するガイダンス、レバレッジ取引に関するルール整備、開発者向けセーフハーバーの検討が含まれる。
  • Project Cryptoは前向きな規制動向のひとつであるが、包括的な立法措置はいまだ実現していない。

背景

Project Cryptoは、2025年に開始されたSEC内部プログラムから大きく進化し、包括的な省庁間連携となった。SECのPaul S. Atkins委員長とCFTCのMichael S. Selig委員長による今回の発表は、市場参加者のコンプライアンスを複雑化させてきた断片的な規制環境に対処するという両当局の強い意思を示すものである。

これまでデジタル資産を取り扱う企業は、SECとCFTCの双方から重複的、場合によっては相反する規制要求に直面してきた。同一のプロダクトについて異なる側面を理由に双方が管轄権を主張することも少なくなく、この不明確さはコンプライアンスコストの増大、イノベーションの阻害、さらには事業の海外流出を招いてきた。単なる理論的問題にとどまらず、どの規制が適用されるかを誤って判断した場合には、実際に執行措置を受けるリスクも存在していた。Project Cryptoは、このような規制上の行き詰まりを解消することを目的としている。

Selig委員長は就任後初の公式発言として、本プロジェクトについて「CFTCにとって新たな章の始まりであり、これまでの伝統を踏まえつつ、規制の明確性、省庁間連携、そしてパーミッションレスなイノベーションへの注力を一層強化するものだ」と述べた。

本イニシアチブは、Stablecoin規制をめぐる対立などにより、議会における包括的なデジタル資産立法の議論が停滞する中で打ち出されたものである。Project Cryptoは重要な前進ではあるものの、規制全体のパズルの一片にすぎない。包括的な立法が実現すれば、より高い法的確実性がもたらされ、明確な法定定義が設けられ、行政措置のみでは達成できない形で当局権限が拡張される可能性もある。もっとも、立法の遅れにもかかわらず、両当局は当面のガイダンス提供や運用面での調整を通じて、近い将来に市場参加者へより明確な指針を示すことができると強調している。したがって、議会の動向にかかわらず、両当局は前進を続ける姿勢を明確にしている。

Project Cryptoの主要要素

Project Cryptoの中核をなすのは、暗号資産に関する共通の資産分類の策定である。これは、デジタル資産が証券に該当するのか商品に該当するのかという、最も論争的であった問題を明確化することを目的としている。これにより、規制アービトラージの抑制が期待され、企業は自社のプロダクトやサービスにどの当局のルールが適用されるのかをより正確に把握できるようになる。

また、両当局の監督対象となる企業に課されてきた重複的な登録義務の解消を図り、コンプライアンスおよび事務負担の軽減を目指している。Atkins委員長は、本プロジェクトの発表に際し、「共通の目的のもとで協力することで、より明確なガイダンス、一貫した基準、そして過去の市場構造ではなく現実の市場の在り方を反映した規制枠組みを提供できる」と述べた。

SECとCFTCは、覚書を締結することにより協力体制を正式化し、データ共有、協調的な市場監視、週次の幹部協議、ルールメイキングの調整を行う予定である。当面の優先事項には、以下が含まれる。

  • 適格な追加的トークン化担保の責任ある活用を可能にするガイダンスやルールの整備
  • 永続先物等の新規デリバティブ商品の国内回帰
  • ソフトウェア開発者向けセーフハーバー枠組みの検討
  • 「Super-Apps」の促進
  • 予測市場・イベント契約における適法なイノベーションを支えるルールメイキング、またレバレッジ、マージン、またはファイナンスを伴う個人向け暗号資産取引に関する明確なルール設定

市場参加者への影響

暗号資産取引所、取引プラットフォーム、機関投資家にとって、Project Cryptoは、より予測可能かつ効率的な規制環境をもたらし、コストや不確実性の低減につながることが期待される。また、本プロジェクトは、他国・地域が暗号資産分野のイノベーション誘致を進める中で、米国の競争力を維持・強化することも目的としている。Atkins委員長は、「金融の未来はどこかで構築される。Project Cryptoを通じて、投資家を保護し、イノベーションを支援し、世界の金融システムにおける米国のリーダーシップを確固たるものとするルールの下で、それが米国で構築されるよう後押ししたい」と述べている。

もっとも、成否は最終的には実行にかかっている。共同イニシアチブには継続的な調整が不可欠であり、指導部の交代や市場の変動を経ても両当局が足並みを揃え続けられるかは未知数である。結局のところ、鍵を握るのは、Project Cryptoから具体的に示されるガイダンス、ルール、執行方針の内容である。市場参加者としては、今後の動向を注視するとともに、ルールメイキング・プロセスに積極的に関与し、規制の明確化が実務上機能するコンプライアンス枠組みへと結実するよう働きかけていくことが重要になる。

この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

[1] Michael S. Selig, Chairman, CFTC, The Next Phase of Project Crypto: Unleashing Innovation for the New Frontier of Finance (Jan. 29, 2026), https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/opaselig1.

[2] Paul S. Atkins, Chairman, SEC, Opening Remarks at Joint SEC-CFTC Harmonization Event – Project Crypto (Jan. 29, 2026), https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/atkins-remarks-joint-sec-cftc-harmonization-event-project-crypto-012926.

[3] Id.

Footnotes

[1] Michael S. Selig, Chairman, CFTC, The Next Phase of Project Crypto: Unleashing Innovation for the New Frontier of Finance (Jan. 29, 2026), https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/opaselig1.

[2] Paul S. Atkins, Chairman, SEC, Opening Remarks at Joint SEC-CFTC Harmonization Event – Project Crypto (Jan. 29, 2026), https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/atkins-remarks-joint-sec-cftc-harmonization-event-project-crypto-012926.

[3] Id.

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

SEC・CFTC、暗号資産業界の統合的監督を目的とする「Project Crypto」を始動

2026年1月29日、米国証券取引委員会(SEC)および米国商品先物取引委員会(CFTC)は、「Project Crypto」の開始を共同で発表した。本プロジェクトは、2025年にSEC内部の取組みとして立ち上げられた構想を発展させ、デジタル資産規制を米国全体で統合することを目的とする省庁間連携へと拡張されたものである。この共同プロジェクトは、デジタル資産業界の長年にわたる2 つの構造的問題((1)特定のプロダクトについてどの当局が管轄権を有するのかという恒常的な不透明性、(2)規制当局間の縄張り争いにより市場参加者が板挟みに遭う状況)に正面から対応するものである。SECとCFTCは、共通の規制フレームワークを構築することで、監督の合理化、重複規制の削減、そして米国の暗号資産市場に対する機関投資家の信認向上を目指している。本プロジェクトは、暗号資産取引所、取引プラットフォーム、ソフトウェア開発者、機関投資家を含む幅広い市場参加者に影響を及ぼすと見込まれる。

ポイント

  • SECとCFTCは、暗号資産規制を統合する共同プロジェクト「Project Crypto」を開始し、長年続いてきた管轄権の混乱および当局間対立の解消を目指す。
  • 本プロジェクトには、共通の資産分類、協調的な監督体制、暗号資産事業者に対するコンプライアンスの合理化が含まれる。
  • 当面の優先事項には、トークン化担保に関するガイダンス、レバレッジ取引に関するルール整備、開発者向けセーフハーバーの検討が含まれる。
  • Project Cryptoは前向きな規制動向のひとつであるが、包括的な立法措置はいまだ実現していない。

背景

Project Cryptoは、2025年に開始されたSEC内部プログラムから大きく進化し、包括的な省庁間連携となった。SECのPaul S. Atkins委員長とCFTCのMichael S. Selig委員長による今回の発表は、市場参加者のコンプライアンスを複雑化させてきた断片的な規制環境に対処するという両当局の強い意思を示すものである。

これまでデジタル資産を取り扱う企業は、SECとCFTCの双方から重複的、場合によっては相反する規制要求に直面してきた。同一のプロダクトについて異なる側面を理由に双方が管轄権を主張することも少なくなく、この不明確さはコンプライアンスコストの増大、イノベーションの阻害、さらには事業の海外流出を招いてきた。単なる理論的問題にとどまらず、どの規制が適用されるかを誤って判断した場合には、実際に執行措置を受けるリスクも存在していた。Project Cryptoは、このような規制上の行き詰まりを解消することを目的としている。

Selig委員長は就任後初の公式発言として、本プロジェクトについて「CFTCにとって新たな章の始まりであり、これまでの伝統を踏まえつつ、規制の明確性、省庁間連携、そしてパーミッションレスなイノベーションへの注力を一層強化するものだ」と述べた。

本イニシアチブは、Stablecoin規制をめぐる対立などにより、議会における包括的なデジタル資産立法の議論が停滞する中で打ち出されたものである。Project Cryptoは重要な前進ではあるものの、規制全体のパズルの一片にすぎない。包括的な立法が実現すれば、より高い法的確実性がもたらされ、明確な法定定義が設けられ、行政措置のみでは達成できない形で当局権限が拡張される可能性もある。もっとも、立法の遅れにもかかわらず、両当局は当面のガイダンス提供や運用面での調整を通じて、近い将来に市場参加者へより明確な指針を示すことができると強調している。したがって、議会の動向にかかわらず、両当局は前進を続ける姿勢を明確にしている。

Project Cryptoの主要要素

Project Cryptoの中核をなすのは、暗号資産に関する共通の資産分類の策定である。これは、デジタル資産が証券に該当するのか商品に該当するのかという、最も論争的であった問題を明確化することを目的としている。これにより、規制アービトラージの抑制が期待され、企業は自社のプロダクトやサービスにどの当局のルールが適用されるのかをより正確に把握できるようになる。

また、両当局の監督対象となる企業に課されてきた重複的な登録義務の解消を図り、コンプライアンスおよび事務負担の軽減を目指している。Atkins委員長は、本プロジェクトの発表に際し、「共通の目的のもとで協力することで、より明確なガイダンス、一貫した基準、そして過去の市場構造ではなく現実の市場の在り方を反映した規制枠組みを提供できる」と述べた。

SECとCFTCは、覚書を締結することにより協力体制を正式化し、データ共有、協調的な市場監視、週次の幹部協議、ルールメイキングの調整を行う予定である。当面の優先事項には、以下が含まれる。

  • 適格な追加的トークン化担保の責任ある活用を可能にするガイダンスやルールの整備
  • 永続先物等の新規デリバティブ商品の国内回帰
  • ソフトウェア開発者向けセーフハーバー枠組みの検討
  • 「Super-Apps」の促進
  • 予測市場・イベント契約における適法なイノベーションを支えるルールメイキング、またレバレッジ、マージン、またはファイナンスを伴う個人向け暗号資産取引に関する明確なルール設定

市場参加者への影響

暗号資産取引所、取引プラットフォーム、機関投資家にとって、Project Cryptoは、より予測可能かつ効率的な規制環境をもたらし、コストや不確実性の低減につながることが期待される。また、本プロジェクトは、他国・地域が暗号資産分野のイノベーション誘致を進める中で、米国の競争力を維持・強化することも目的としている。Atkins委員長は、「金融の未来はどこかで構築される。Project Cryptoを通じて、投資家を保護し、イノベーションを支援し、世界の金融システムにおける米国のリーダーシップを確固たるものとするルールの下で、それが米国で構築されるよう後押ししたい」と述べている。

もっとも、成否は最終的には実行にかかっている。共同イニシアチブには継続的な調整が不可欠であり、指導部の交代や市場の変動を経ても両当局が足並みを揃え続けられるかは未知数である。結局のところ、鍵を握るのは、Project Cryptoから具体的に示されるガイダンス、ルール、執行方針の内容である。市場参加者としては、今後の動向を注視するとともに、ルールメイキング・プロセスに積極的に関与し、規制の明確化が実務上機能するコンプライアンス枠組みへと結実するよう働きかけていくことが重要になる。

この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

[1] Michael S. Selig, Chairman, CFTC, The Next Phase of Project Crypto: Unleashing Innovation for the New Frontier of Finance (Jan. 29, 2026), https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/opaselig1.

[2] Paul S. Atkins, Chairman, SEC, Opening Remarks at Joint SEC-CFTC Harmonization Event – Project Crypto (Jan. 29, 2026), https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/atkins-remarks-joint-sec-cftc-harmonization-event-project-crypto-012926.

[3] Id.

Footnotes

[1] Michael S. Selig, Chairman, CFTC, The Next Phase of Project Crypto: Unleashing Innovation for the New Frontier of Finance (Jan. 29, 2026), https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/opaselig1.

[2] Paul S. Atkins, Chairman, SEC, Opening Remarks at Joint SEC-CFTC Harmonization Event – Project Crypto (Jan. 29, 2026), https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/atkins-remarks-joint-sec-cftc-harmonization-event-project-crypto-012926.

[3] Id.

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

ニュース

Publications

In New York Law Journal, The True Lender Doctrine and the OppFi Decision

Partners Jeremy Creelan, Michael Ross, Megan Poetzel, and Laurel Loomis Rimon, and Associate Molly Oberstein-Allen authored an article for the New York Law Journal examining the "True Lender" doctrine in light of a May 2026 California decision that provides the most detailed judicial framework to date for evaluating bank-nonbank lending partnerships.

July 1, 2026

Event

Partner Michael Vernick to Speak at NACUA's 2026 Annual Conference

On July 1, Partner Michael Vernick will speak on a panel at the National Association of College and University Attorneys (NACUA) 2026 Annual Conference in Nashville.

July 1, 2026

Publications

In Employee Relations Law Journal: What Happens When ERISA Disability Deadlines Slip

Partner Joseph Torres along with Associates Emma O'Connor and Christopher LeWarne, authored an article for the Employee Relations Law Journal analyzing a significant Fourth Circuit decision with substantial consequences for ERISA disability plan administrators.

June 23, 2026

Publications

In Law360, Partner Samuel Feder Analyzes the Supreme Court's Ruling in FCC v. AT&T

Partner Sam Feder authored an article in Law360 examining the Supreme Court's June 4 decision in Federal Communications Commission v. AT&T Inc., which rejected AT&T's and Verizon's argument that the FCC's forfeiture process violates the Seventh Amendment right to a jury trial.

June 16, 2026