米国司法省、省全体に適用され、各部門プログラムに優先する初の企業執行ポリシーを公表

2026年3月10日、米国司法省(Department of Justice、DOJ)は、刑事事件に関する初の省全体適用の企業執行および自主的自己開示規則(Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy、CEP)を公表し、これを、現在有効なすべての各部門および連邦検察官事務所の企業執行規則に優先するものとした。新たな規則は、2025年5月に刑事部(Criminal Division)が導入した枠組みを、15 U.S.C. §§ 1-38に基づく反トラスト違反を除いた企業刑事案件を扱うすべてのDOJ部門に拡張するものである。特に注目すべき点として、新規則は、2026年2月24日にニューヨーク南部連邦検事局(Southern District of New York、 SDNY)が公表した金融犯罪に関する企業執行および自主的自己開示プログラムを実質的に無効化するものである。

従来の刑事部におけるCEPのコアとなる三層構造は維持されているものの、新規則において、企業およびその弁護士が慎重に検討すべき複数の変更点が導入されている。

三層構造の概要

CEPでは、引き続き、想定される結果が以下の三層の区分に整理されている。

  • パートI — 不起訴処分(Declination:自主的な自己開示を行い、全面的に協力し、適時かつ適切に是正措置を講じ、さらに、加重要素が存在しない企業に対して適用される。CEPの下では、自主的な自己開示とは、企業が、これまでDOJに認識されていなかった不正行為であって、企業に開示義務がなく、かつ、他の手段ではDOJが発見する可能性が低かったものについて、適切なDOJ刑事部門に迅速に報告することを意味する。内部通報者が先にDOJに通報した場合であっても、企業が内部通報を受けてから合理的に可能な限り速やかに、遅くとも120日以内に自ら報告を行い、かつ、その他の要件を満たす限り、不起訴処分を得ることができる。

また、加重要素が存在する場合であっても、当該要素の重みと企業の協力や是正措置の質を比較衡量した上で、検察官は、その裁量により、CEPに基づく不起訴処分を推奨することが可能である。不起訴処分には、不当利得の返還・没収および完全な損害賠償・被害者補償の支払いが必要であり、また、不起訴処分は公表される。

  • パートII 起訴猶予合意(Non-Prosecution Agreement NPA:惜しくも完全な自主的自己開示には至らなかった場合(「near miss」)や、刑事処分を正当化する加重要素が存在するものの、全面的に協力し適切な是正措置を行った企業に適用される。起訴猶予合意に基づく処分の期間は3年未満であり、独立モニターは付されず、罰金は米国量刑ガイドライン(U.S. Sentencing Guidelines、U.S.S.G.)の下限から50〜75%減額される。
  • パートIII — 検察官裁量:その他すべての事案において、検察官は、その裁量により、処分の形態、期間、遵守すべき義務、制裁内容を決定することができる。金銭的制裁については、減額はU.S.S.G.範囲の50%が上限となる。

従前の部門別ポリシーからの主な変更点

  • 適用範囲の省全体への拡大:CEPは現在、刑事部の扱う案件に限らず、すべてのDOJ企業刑事案件に適用される。従来、独自の自主的自己開示枠組みの下で運用されていた連邦検察官当局も、同一の三層構造、協力基準、是正措置の定義に拘束される。自己開示を検討する企業にとって、従来の分析に影響していた部門別の差異は今は存在しない。CEPでは、開示先は特定の部門に限定されるものではなく、企業は適切なDOJ部門のいずれかに自己報告することができ、ある部門への誠実な開示が後に別の部門で処理された場合でも、要件を満たす。また、連邦規制当局やその他の非DOJ機関への誠実な開示も、状況に応じて、DOJの裁量により適格とされ得る。
  • SDNY金融犯罪プログラムへの優先:新たなDOJ全体適用CEPのわずか2週間前に公表された、2026年2月24日付のSDNYの金融犯罪に関する企業執行および自主的自己開示プログラムは、もはや有効ではない。当該SDNYプログラムは、従来のDOJ規則と比較して、自己報告を行う企業に対して複数のより有利な取扱いを提供していた。かかる取り扱いには、加重要素の定義がより限定的であること、企業が被害者への迅速かつ完全な賠償のために「合理的に最大限の努力(reasonable best efforts)」を尽くした場合には不起訴処分において罰金・没収を免除すること、違法行為が報道された後でも不起訴処分を得る手段があること、より有利な不起訴処分のタイムラインが設定されていることなどが含まれていた。特に重要な点として、CEPでは適格企業に対する不起訴処分は政府の調査終了時点で初めて保証されるのに対し、SDNYプログラムでは自己報告後数週間以内に条件付き不起訴処分が提示され、初期の時点から明確な合意の下での解決への道筋が示されていた。新CEPの公表リリースにおいては、CEPが「現在有効なすべての各部門および連邦検察官当局の企業執行規則に優先する」と明示されている。SDNYプログラムを前提に自己開示を検討していた企業は、新たな省全体適用枠組みの下での選択肢を再評価する必要がある。

従前の刑事部ポリシーからの変更点

新CEPは、基本的に2025年5月に公表された刑事部のCEPの文言を踏襲しているが、複数の軽微な変更が含まれている。

  • パートIIの罰金減額幅の変更:従来の刑事部のCEPでは、パートIIの取り扱いを受ける企業に対してはU.S.S.G.下限から一律75%の減額が認められていたが、新たなDOJ全体適用CEPでは、50〜75%の範囲での減額に変更され、企業が自己開示を検討する際の金銭的結果の予測可能性は低下した。
  • 再犯基準の拡張:新規則では、従来の刑事部のCEPにおける 5年間の期間的な制約を超えて、「現在の不正行為に関与した主体による、過去5年以内またはその他の時期における、類似の不正行為に基づく刑事上の裁定または決定」を含むよう拡張された。これにより検察官は、時期にかかわらず、類似の不正行為に関連する過去の刑事上の決定を考慮に入れることが可能となった。
  • より迅速な明確化の促進:新規則には、「自己報告を行う企業にとっての不確実性を最小化するため、検察官は、本規則のパートI・パートIIの適格性判断を行うために開示に関する関連事実や状況の把握に努め、また、適切な場合には、可能な限り速やかに企業に通知することが奨励される」との明示文言が追加されている。これは、企業調査の迅速化に対する米国司法省の関心と整合的である。
  • 企業規模に応じた協力評価の調整:新規則では、DOJが協力の範囲、量、質、影響、タイミングを評価する際において、「協力企業の規模、洗練度、財務状況」を考慮すべきであることが明示された。これにより、小規模企業や資源制約のある企業において、協力の方法に一定の柔軟性が認められる可能性がある。
  • 衝突排除(De-Confliction)保護の明確化:新規則には、捜査に支障のある行為を控えるべきDe-Confliction期間中であっても、企業が法的義務として必要のある行為を行うことは妨げられないが、事前にDOJに通知し、合理的な対応措置を取るための十分な時間を与える必要があることが明示された。これは、政府調査への協力義務と他の法的義務との間で競合が生じる場合の実務的保護である。

企業への影響

新たな省全体適用CEPは、2025年から刑事部の案件に適用されてきた基本枠組みを維持しつつ、それを省全体に一貫して適用するものである。不正行為の自己報告の是非や政府調査への最適な協力方法を検討する企業は、今後は統一されたルールに基づいて判断することになる。適用を受ける可能性のあるインセンティブを十分に理解した上で、経験豊富な弁護士と協議しながら迅速に判断することが、従来と同じく極めて重要である。

この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

米国司法省、省全体に適用され、各部門プログラムに優先する初の企業執行ポリシーを公表

2026年3月10日、米国司法省(Department of Justice、DOJ)は、刑事事件に関する初の省全体適用の企業執行および自主的自己開示規則(Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy、CEP)を公表し、これを、現在有効なすべての各部門および連邦検察官事務所の企業執行規則に優先するものとした。新たな規則は、2025年5月に刑事部(Criminal Division)が導入した枠組みを、15 U.S.C. §§ 1-38に基づく反トラスト違反を除いた企業刑事案件を扱うすべてのDOJ部門に拡張するものである。特に注目すべき点として、新規則は、2026年2月24日にニューヨーク南部連邦検事局(Southern District of New York、 SDNY)が公表した金融犯罪に関する企業執行および自主的自己開示プログラムを実質的に無効化するものである。

従来の刑事部におけるCEPのコアとなる三層構造は維持されているものの、新規則において、企業およびその弁護士が慎重に検討すべき複数の変更点が導入されている。

三層構造の概要

CEPでは、引き続き、想定される結果が以下の三層の区分に整理されている。

  • パートI — 不起訴処分(Declination:自主的な自己開示を行い、全面的に協力し、適時かつ適切に是正措置を講じ、さらに、加重要素が存在しない企業に対して適用される。CEPの下では、自主的な自己開示とは、企業が、これまでDOJに認識されていなかった不正行為であって、企業に開示義務がなく、かつ、他の手段ではDOJが発見する可能性が低かったものについて、適切なDOJ刑事部門に迅速に報告することを意味する。内部通報者が先にDOJに通報した場合であっても、企業が内部通報を受けてから合理的に可能な限り速やかに、遅くとも120日以内に自ら報告を行い、かつ、その他の要件を満たす限り、不起訴処分を得ることができる。

また、加重要素が存在する場合であっても、当該要素の重みと企業の協力や是正措置の質を比較衡量した上で、検察官は、その裁量により、CEPに基づく不起訴処分を推奨することが可能である。不起訴処分には、不当利得の返還・没収および完全な損害賠償・被害者補償の支払いが必要であり、また、不起訴処分は公表される。

  • パートII 起訴猶予合意(Non-Prosecution Agreement NPA:惜しくも完全な自主的自己開示には至らなかった場合(「near miss」)や、刑事処分を正当化する加重要素が存在するものの、全面的に協力し適切な是正措置を行った企業に適用される。起訴猶予合意に基づく処分の期間は3年未満であり、独立モニターは付されず、罰金は米国量刑ガイドライン(U.S. Sentencing Guidelines、U.S.S.G.)の下限から50〜75%減額される。
  • パートIII — 検察官裁量:その他すべての事案において、検察官は、その裁量により、処分の形態、期間、遵守すべき義務、制裁内容を決定することができる。金銭的制裁については、減額はU.S.S.G.範囲の50%が上限となる。

従前の部門別ポリシーからの主な変更点

  • 適用範囲の省全体への拡大:CEPは現在、刑事部の扱う案件に限らず、すべてのDOJ企業刑事案件に適用される。従来、独自の自主的自己開示枠組みの下で運用されていた連邦検察官当局も、同一の三層構造、協力基準、是正措置の定義に拘束される。自己開示を検討する企業にとって、従来の分析に影響していた部門別の差異は今は存在しない。CEPでは、開示先は特定の部門に限定されるものではなく、企業は適切なDOJ部門のいずれかに自己報告することができ、ある部門への誠実な開示が後に別の部門で処理された場合でも、要件を満たす。また、連邦規制当局やその他の非DOJ機関への誠実な開示も、状況に応じて、DOJの裁量により適格とされ得る。
  • SDNY金融犯罪プログラムへの優先:新たなDOJ全体適用CEPのわずか2週間前に公表された、2026年2月24日付のSDNYの金融犯罪に関する企業執行および自主的自己開示プログラムは、もはや有効ではない。当該SDNYプログラムは、従来のDOJ規則と比較して、自己報告を行う企業に対して複数のより有利な取扱いを提供していた。かかる取り扱いには、加重要素の定義がより限定的であること、企業が被害者への迅速かつ完全な賠償のために「合理的に最大限の努力(reasonable best efforts)」を尽くした場合には不起訴処分において罰金・没収を免除すること、違法行為が報道された後でも不起訴処分を得る手段があること、より有利な不起訴処分のタイムラインが設定されていることなどが含まれていた。特に重要な点として、CEPでは適格企業に対する不起訴処分は政府の調査終了時点で初めて保証されるのに対し、SDNYプログラムでは自己報告後数週間以内に条件付き不起訴処分が提示され、初期の時点から明確な合意の下での解決への道筋が示されていた。新CEPの公表リリースにおいては、CEPが「現在有効なすべての各部門および連邦検察官当局の企業執行規則に優先する」と明示されている。SDNYプログラムを前提に自己開示を検討していた企業は、新たな省全体適用枠組みの下での選択肢を再評価する必要がある。

従前の刑事部ポリシーからの変更点

新CEPは、基本的に2025年5月に公表された刑事部のCEPの文言を踏襲しているが、複数の軽微な変更が含まれている。

  • パートIIの罰金減額幅の変更:従来の刑事部のCEPでは、パートIIの取り扱いを受ける企業に対してはU.S.S.G.下限から一律75%の減額が認められていたが、新たなDOJ全体適用CEPでは、50〜75%の範囲での減額に変更され、企業が自己開示を検討する際の金銭的結果の予測可能性は低下した。
  • 再犯基準の拡張:新規則では、従来の刑事部のCEPにおける 5年間の期間的な制約を超えて、「現在の不正行為に関与した主体による、過去5年以内またはその他の時期における、類似の不正行為に基づく刑事上の裁定または決定」を含むよう拡張された。これにより検察官は、時期にかかわらず、類似の不正行為に関連する過去の刑事上の決定を考慮に入れることが可能となった。
  • より迅速な明確化の促進:新規則には、「自己報告を行う企業にとっての不確実性を最小化するため、検察官は、本規則のパートI・パートIIの適格性判断を行うために開示に関する関連事実や状況の把握に努め、また、適切な場合には、可能な限り速やかに企業に通知することが奨励される」との明示文言が追加されている。これは、企業調査の迅速化に対する米国司法省の関心と整合的である。
  • 企業規模に応じた協力評価の調整:新規則では、DOJが協力の範囲、量、質、影響、タイミングを評価する際において、「協力企業の規模、洗練度、財務状況」を考慮すべきであることが明示された。これにより、小規模企業や資源制約のある企業において、協力の方法に一定の柔軟性が認められる可能性がある。
  • 衝突排除(De-Confliction)保護の明確化:新規則には、捜査に支障のある行為を控えるべきDe-Confliction期間中であっても、企業が法的義務として必要のある行為を行うことは妨げられないが、事前にDOJに通知し、合理的な対応措置を取るための十分な時間を与える必要があることが明示された。これは、政府調査への協力義務と他の法的義務との間で競合が生じる場合の実務的保護である。

企業への影響

新たな省全体適用CEPは、2025年から刑事部の案件に適用されてきた基本枠組みを維持しつつ、それを省全体に一貫して適用するものである。不正行為の自己報告の是非や政府調査への最適な協力方法を検討する企業は、今後は統一されたルールに基づいて判断することになる。適用を受ける可能性のあるインセンティブを十分に理解した上で、経験豊富な弁護士と協議しながら迅速に判断することが、従来と同じく極めて重要である。

この記事は英文の記事の要約版となります。また、この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

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