連邦最高裁判所、国際仲裁裁定に対する厳格な基準を却下
2025年6月5日、連邦最高裁判所は、全裁判官一致の判決で、米国の裁判所において外国国家またはその機関に対する仲裁裁定の執行を求める民事訴訟当事者は、1976年外国主権免責法(以下「FSIA」)で定められた管轄権の基準よりも厳格な基準を満たす必要はない、と判示した(CC/Devas (Mauritius) Ltd. v. Antrix Corp., No. 23-1201)。連邦最高裁判所の判断は比較的狭く、議論の余地のないものであるが、外国政府や外国企業が米国裁判所の管轄権を拒否し、仲裁判断の執行を回避しようとする将来の試みは失敗に終わる可能性が高いことが示唆されている。
1976年、米国議会により、外国国家やその機関の免責に関する未確定な法制度に明確性と一貫性をもたらすため、FSIAが制定された(28 U.S.C. §§ 1602 et seq)。FSIAでは、原告が同法で定められた例外事項のいずれかを満たさない限り、外国国家やその機関は米国裁判所における訴訟から免責される旨が定められている。当該例外事項には、米国との特定の関連性を持つ商業活動に基づく請求、米国における人身傷害や財産損害の原因となる不法行為に基づく請求、米国との関連性を有する仲裁判断の確認を求める訴訟(例えば、米国が当事国である条約や国際仲裁合意に準拠する場合)などが含まれる。さらに、列挙された例外事項のいずれかが満たされ、かつ、被告への送達が同法で定められた方法で行われた場合、裁判所は被告に対して対人管轄権を有することが明確に定められている(28 U.S.C. § 1330)。
2018年9月、衛星ベースの通信技術開発を行うインドの民間企業Devas社は、ワシントン州の連邦裁判所に、Antrix社(インドがインド宇宙局の用途のために所有する企業)が数億ドルの契約を解除した後にAntrix社に対して獲得した仲裁判断を確認する申し立てを行った。Devas社は、FSIAに基づく対人管轄権の2つの要件((1)仲裁例外に該当すること、(2)同法の送達要件を満たしていること)を充足していることを示したが、Antrix社は、International Shoe Co. v. Washington訴訟で定められた連邦最高裁判所の対人管轄権の基準に基づき、法廷地との「最低限の接触(minimum contracts)」がないため対人管轄権は存在しない、と主張した。連邦第9巡回区控訴裁判所は、FSIAの黙示要件として「最低限の接触」基準を満たす必要があるとして、対人管轄権が存在しないとの判断を示した。
連邦最高裁判所は、9対0の判決で同控訴裁判所の判断を破棄し、FSIAでは、対人管轄権を満たす要件として「例外事項の充足」と「特別な送達要件の順守」の2つだけが明示されている、と判断した。同法には「最低限の接触」に関する言及はないため、連邦最高裁判所は、「議会が省略した要件を追加することを拒否」した。連邦最高裁判所は、連邦第9巡回区控訴裁判所が「最低限の接触」はFSIAで黙示されている法定要件であると判断したこと(但し、Antrix社はこれを主張していない)のみを検討しており、Antrix社が主張した「米国憲法修正第5条により、法定要件を超える最低限の接触が必要とされる」という主張には言及しなかった点が注目される。審理差し戻しにより下級裁判所で当該主張が審理されることになったものの、連邦最高裁判所の意見には、当該主張に関してもAntrix社に不利な判断を下す根拠が一部存在する。すなわち、連邦最高裁判所は、議会が「外国国家が米国で訴訟の対象となる適格性を包括的に規制する」ためにFSIAを制定した際、同法の免責規定と管轄権規定をその制度の「基盤」として設定し、「意図的にそれらを結びつけた」と指摘した。さらに、連邦最高裁判所は、免責の例外事項それ自体により「訴訟進行以前に、訴訟に関連する様々な程度の国内での接触が要求されている」と指摘し、これは最低限の接触基準に類似するものである。このように、連邦最高裁判所の判断において、FSIAの管轄権規定が憲法上の管轄権要件を満たすように制定された、との判断を支持する根拠が示されている。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
2018年9月、衛星ベースの通信技術開発を行うインドの民間企業Devas社は、ワシントン州の連邦裁判所に、Antrix社(インドがインド宇宙局の用途のために所有する企業)が数億ドルの契約を解除した後にAntrix社に対して獲得した仲裁判断を確認する申し立てを行った。Devas社は、FSIAに基づく対人管轄権の2つの要件((1)仲裁例外に該当すること、(2)同法の送達要件を満たしていること)を充足していることを示したが、Antrix社は、International Shoe Co. v. Washington訴訟で定められた連邦最高裁判所の対人管轄権の基準に基づき、法廷地との「最低限の接触(minimum contracts)」がないため対人管轄権は存在しない、と主張した。連邦第9巡回区控訴裁判所は、FSIAの黙示要件として「最低限の接触」基準を満たす必要があるとして、対人管轄権が存在しないとの判断を示した。
連邦最高裁判所は、9対0の判決で同控訴裁判所の判断を破棄し、FSIAでは、対人管轄権を満たす要件として「例外事項の充足」と「特別な送達要件の順守」の2つだけが明示されている、と判断した。同法には「最低限の接触」に関する言及はないため、連邦最高裁判所は、「議会が省略した要件を追加することを拒否」した。連邦最高裁判所は、連邦第9巡回区控訴裁判所が「最低限の接触」はFSIAで黙示されている法定要件であると判断したこと(但し、Antrix社はこれを主張していない)のみを検討しており、Antrix社が主張した「米国憲法修正第5条により、法定要件を超える最低限の接触が必要とされる」という主張には言及しなかった点が注目される。審理差し戻しにより下級裁判所で当該主張が審理されることになったものの、連邦最高裁判所の意見には、当該主張に関してもAntrix社に不利な判断を下す根拠が一部存在する。すなわち、連邦最高裁判所は、議会が「外国国家が米国で訴訟の対象となる適格性を包括的に規制する」ためにFSIAを制定した際、同法の免責規定と管轄権規定をその制度の「基盤」として設定し、「意図的にそれらを結びつけた」と指摘した。さらに、連邦最高裁判所は、免責の例外事項それ自体により「訴訟進行以前に、訴訟に関連する様々な程度の国内での接触が要求されている」と指摘し、これは最低限の接触基準に類似するものである。このように、連邦最高裁判所の判断において、FSIAの管轄権規定が憲法上の管轄権要件を満たすように制定された、との判断を支持する根拠が示されている。
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© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.
2025年6月5日、連邦最高裁判所は、全裁判官一致の判決で、米国の裁判所において外国国家またはその機関に対する仲裁裁定の執行を求める民事訴訟当事者は、1976年外国主権免責法(以下「FSIA」)で定められた管轄権の基準よりも厳格な基準を満たす必要はない、と判示した(CC/Devas (Mauritius) Ltd. v. Antrix Corp., No. 23-1201)。連邦最高裁判所の判断は比較的狭く、議論の余地のないものであるが、外国政府や外国企業が米国裁判所の管轄権を拒否し、仲裁判断の執行を回避しようとする将来の試みは失敗に終わる可能性が高いことが示唆されている。
1976年、米国議会により、外国国家やその機関の免責に関する未確定な法制度に明確性と一貫性をもたらすため、FSIAが制定された(28 U.S.C. §§ 1602 et seq)。FSIAでは、原告が同法で定められた例外事項のいずれかを満たさない限り、外国国家やその機関は米国裁判所における訴訟から免責される旨が定められている。当該例外事項には、米国との特定の関連性を持つ商業活動に基づく請求、米国における人身傷害や財産損害の原因となる不法行為に基づく請求、米国との関連性を有する仲裁判断の確認を求める訴訟(例えば、米国が当事国である条約や国際仲裁合意に準拠する場合)などが含まれる。さらに、列挙された例外事項のいずれかが満たされ、かつ、被告への送達が同法で定められた方法で行われた場合、裁判所は被告に対して対人管轄権を有することが明確に定められている(28 U.S.C. § 1330)。
2018年9月、衛星ベースの通信技術開発を行うインドの民間企業Devas社は、ワシントン州の連邦裁判所に、Antrix社(インドがインド宇宙局の用途のために所有する企業)が数億ドルの契約を解除した後にAntrix社に対して獲得した仲裁判断を確認する申し立てを行った。Devas社は、FSIAに基づく対人管轄権の2つの要件((1)仲裁例外に該当すること、(2)同法の送達要件を満たしていること)を充足していることを示したが、Antrix社は、International Shoe Co. v. Washington訴訟で定められた連邦最高裁判所の対人管轄権の基準に基づき、法廷地との「最低限の接触(minimum contracts)」がないため対人管轄権は存在しない、と主張した。連邦第9巡回区控訴裁判所は、FSIAの黙示要件として「最低限の接触」基準を満たす必要があるとして、対人管轄権が存在しないとの判断を示した。
連邦最高裁判所は、9対0の判決で同控訴裁判所の判断を破棄し、FSIAでは、対人管轄権を満たす要件として「例外事項の充足」と「特別な送達要件の順守」の2つだけが明示されている、と判断した。同法には「最低限の接触」に関する言及はないため、連邦最高裁判所は、「議会が省略した要件を追加することを拒否」した。連邦最高裁判所は、連邦第9巡回区控訴裁判所が「最低限の接触」はFSIAで黙示されている法定要件であると判断したこと(但し、Antrix社はこれを主張していない)のみを検討しており、Antrix社が主張した「米国憲法修正第5条により、法定要件を超える最低限の接触が必要とされる」という主張には言及しなかった点が注目される。審理差し戻しにより下級裁判所で当該主張が審理されることになったものの、連邦最高裁判所の意見には、当該主張に関してもAntrix社に不利な判断を下す根拠が一部存在する。すなわち、連邦最高裁判所は、議会が「外国国家が米国で訴訟の対象となる適格性を包括的に規制する」ためにFSIAを制定した際、同法の免責規定と管轄権規定をその制度の「基盤」として設定し、「意図的にそれらを結びつけた」と指摘した。さらに、連邦最高裁判所は、免責の例外事項それ自体により「訴訟進行以前に、訴訟に関連する様々な程度の国内での接触が要求されている」と指摘し、これは最低限の接触基準に類似するものである。このように、連邦最高裁判所の判断において、FSIAの管轄権規定が憲法上の管轄権要件を満たすように制定された、との判断を支持する根拠が示されている。
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2018年9月、衛星ベースの通信技術開発を行うインドの民間企業Devas社は、ワシントン州の連邦裁判所に、Antrix社(インドがインド宇宙局の用途のために所有する企業)が数億ドルの契約を解除した後にAntrix社に対して獲得した仲裁判断を確認する申し立てを行った。Devas社は、FSIAに基づく対人管轄権の2つの要件((1)仲裁例外に該当すること、(2)同法の送達要件を満たしていること)を充足していることを示したが、Antrix社は、International Shoe Co. v. Washington訴訟で定められた連邦最高裁判所の対人管轄権の基準に基づき、法廷地との「最低限の接触(minimum contracts)」がないため対人管轄権は存在しない、と主張した。連邦第9巡回区控訴裁判所は、FSIAの黙示要件として「最低限の接触」基準を満たす必要があるとして、対人管轄権が存在しないとの判断を示した。
連邦最高裁判所は、9対0の判決で同控訴裁判所の判断を破棄し、FSIAでは、対人管轄権を満たす要件として「例外事項の充足」と「特別な送達要件の順守」の2つだけが明示されている、と判断した。同法には「最低限の接触」に関する言及はないため、連邦最高裁判所は、「議会が省略した要件を追加することを拒否」した。連邦最高裁判所は、連邦第9巡回区控訴裁判所が「最低限の接触」はFSIAで黙示されている法定要件であると判断したこと(但し、Antrix社はこれを主張していない)のみを検討しており、Antrix社が主張した「米国憲法修正第5条により、法定要件を超える最低限の接触が必要とされる」という主張には言及しなかった点が注目される。審理差し戻しにより下級裁判所で当該主張が審理されることになったものの、連邦最高裁判所の意見には、当該主張に関してもAntrix社に不利な判断を下す根拠が一部存在する。すなわち、連邦最高裁判所は、議会が「外国国家が米国で訴訟の対象となる適格性を包括的に規制する」ためにFSIAを制定した際、同法の免責規定と管轄権規定をその制度の「基盤」として設定し、「意図的にそれらを結びつけた」と指摘した。さらに、連邦最高裁判所は、免責の例外事項それ自体により「訴訟進行以前に、訴訟に関連する様々な程度の国内での接触が要求されている」と指摘し、これは最低限の接触基準に類似するものである。このように、連邦最高裁判所の判断において、FSIAの管轄権規定が憲法上の管轄権要件を満たすように制定された、との判断を支持する根拠が示されている。
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