レッドフラッグに対応する取締役と役員の義務

監視義務は、 (1)企業が適切な報告体制を備えるために誠実(good faith)に努力すること、および、(2)企業の不正行為の可能性を示すレッドフラッグに対処することを取締役に求めるものである。これらの監視義務は、Caremark クレームと呼ばれることが多く、(1)情報体制に関する請求(information systems claims)や(2)レッドフラッグに関する請求(red-flag claims)という、2種類の請求の根拠となるものである。最近の複数の判決において、デラウェア州衡平法裁判所(Delaware Court of Chancery)は、レッドフラッグに関する請求についてさらなる指針を示している。

レッドフラッグに関する請求は、必要な報告体制や管理体制が整っていたとしても、企業の取締役(かつ、場合によっては役員)がそれらの体制の利用や監視を怠ったことにより、注意すべき問題について情報提供を受けておらず、その結果対処することができなかった、と主張するものである。 レッドフラッグに関する請求では、一般的に、取締役や役員がそのような情報の提供を受けておらず、そのような情報に基づいて行動しなかったという不作為が、 (1)十分に継続的、(2)組織的、または、(3)顕著であり、不誠実(bad faith)に相当することが求められる。

場合によっては、ある顕著なレッドフラッグが、レッドフラッグに関する請求の根拠となることもある。例えば、デラウェア州衡平法裁判所は、最近、製造業者が、当該製造業者の製品に関わる重大なインシデントの原因となった問題を調査しなかったことは、レッドフラッグに関する請求に必要な不誠実性を推認する根拠として十分である、と判示した[1 ]。同裁判所は、指摘されたレッドフラッグは1つだけであったにもかかわらず、そのレッドフラッグが特に生々しく壊滅的であった(graphic and devastating)ため、レッドフラッグに関する請求の根拠として十分である、と判示した。このように、生々しいまたは壊滅的なレッドフラッグが1件のみ発生した状況では、取締役会と役員は、当該問題を異例なものとして扱うのではなく、問題に対処するために適切な行動を取るべきである。しかし、デラウェア州の裁判所は、レッドフラッグが「ミッション・クリティカルなリスク」に関連するものである必要はなく[2 ]、むしろ、企業の取締役会が企業に損害を与える可能性のあるレッドフラッグに適切に対処しない場合には、レッドフラッグに関する請求が可能となる可能性があることを明らかにしている。「ミッション・クリティカル」なレッドフラッグや主要なコンプライアンスに関するレッドフラッグに対処しない場合、レッドフラッグに関する請求が可能となる可能性が最も高いが、取締役は、企業に対するリスクに関する情報提供をどのように受けるかだけでなく、そのようなリスクが発生した場合にどのように対応するかについても、最新の記録を保持すべきである。

また、レッドフラッグに対応する義務は取締役に限定されるものではない。デラウェア州最高裁判所はまだこの問題について直接取り上げていないものの、最近のデラウェア州衡平法裁判所の判決では、取締役と同様に役員は、事業運営において重要な役割を担っており、「レッドフラッグを特定し、当該問題に対処又は報告する最適な立場にある」ため、レッドフラッグに関する請求の範囲が企業の役員にまで拡大されることが明示されている[3 ]。 しかし、このような請求に対する役員の責任は、一般的に当該役員の権限の範囲に限定される。

このような最近の判決を踏まえると、(特にデラウェア州の企業の)取締役と役員は、レッドフラッグが発生した際に、誠実に適切な対処をすべきである。 さらに、レッドフラッグに関する請求を行うためには、一般的に、取締役や役員の不作為が不誠実に相当する程度のものであるとの認定が必要であるところ ところ、取締役と役員は、彼らに対するレッドフラッグに関する請求が成功した場合、たとえ免責条項が2022年8月の第102条(b)(7)の改定により拡大されたとしても 、当該企業の定款に規定することが可能である第102条(b)(7)の免責条項によって免責されない可能性があることに留意する必要がある。

この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

(1) Boeing Co.の株主代表訴訟参照(C.A. No. 2019-0907-MTZ, 2021 WL 4059934 (Del. Ch., Feb. 1, 2021))

(2) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 278 (Del. Ch., March 1, 2023))

(3) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 255 (Del. Ch., January 26, 2023))

脚注

(1) Boeing Co.の株主代表訴訟参照(C.A. No. 2019-0907-MTZ, 2021 WL 4059934 (Del. Ch., Feb. 1, 2021))

(2) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 278 (Del. Ch., March 1, 2023))

(3) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 255 (Del. Ch., January 26, 2023))

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

レッドフラッグに対応する取締役と役員の義務

監視義務は、 (1)企業が適切な報告体制を備えるために誠実(good faith)に努力すること、および、(2)企業の不正行為の可能性を示すレッドフラッグに対処することを取締役に求めるものである。これらの監視義務は、Caremark クレームと呼ばれることが多く、(1)情報体制に関する請求(information systems claims)や(2)レッドフラッグに関する請求(red-flag claims)という、2種類の請求の根拠となるものである。最近の複数の判決において、デラウェア州衡平法裁判所(Delaware Court of Chancery)は、レッドフラッグに関する請求についてさらなる指針を示している。

レッドフラッグに関する請求は、必要な報告体制や管理体制が整っていたとしても、企業の取締役(かつ、場合によっては役員)がそれらの体制の利用や監視を怠ったことにより、注意すべき問題について情報提供を受けておらず、その結果対処することができなかった、と主張するものである。 レッドフラッグに関する請求では、一般的に、取締役や役員がそのような情報の提供を受けておらず、そのような情報に基づいて行動しなかったという不作為が、 (1)十分に継続的、(2)組織的、または、(3)顕著であり、不誠実(bad faith)に相当することが求められる。

場合によっては、ある顕著なレッドフラッグが、レッドフラッグに関する請求の根拠となることもある。例えば、デラウェア州衡平法裁判所は、最近、製造業者が、当該製造業者の製品に関わる重大なインシデントの原因となった問題を調査しなかったことは、レッドフラッグに関する請求に必要な不誠実性を推認する根拠として十分である、と判示した[1 ]。同裁判所は、指摘されたレッドフラッグは1つだけであったにもかかわらず、そのレッドフラッグが特に生々しく壊滅的であった(graphic and devastating)ため、レッドフラッグに関する請求の根拠として十分である、と判示した。このように、生々しいまたは壊滅的なレッドフラッグが1件のみ発生した状況では、取締役会と役員は、当該問題を異例なものとして扱うのではなく、問題に対処するために適切な行動を取るべきである。しかし、デラウェア州の裁判所は、レッドフラッグが「ミッション・クリティカルなリスク」に関連するものである必要はなく[2 ]、むしろ、企業の取締役会が企業に損害を与える可能性のあるレッドフラッグに適切に対処しない場合には、レッドフラッグに関する請求が可能となる可能性があることを明らかにしている。「ミッション・クリティカル」なレッドフラッグや主要なコンプライアンスに関するレッドフラッグに対処しない場合、レッドフラッグに関する請求が可能となる可能性が最も高いが、取締役は、企業に対するリスクに関する情報提供をどのように受けるかだけでなく、そのようなリスクが発生した場合にどのように対応するかについても、最新の記録を保持すべきである。

また、レッドフラッグに対応する義務は取締役に限定されるものではない。デラウェア州最高裁判所はまだこの問題について直接取り上げていないものの、最近のデラウェア州衡平法裁判所の判決では、取締役と同様に役員は、事業運営において重要な役割を担っており、「レッドフラッグを特定し、当該問題に対処又は報告する最適な立場にある」ため、レッドフラッグに関する請求の範囲が企業の役員にまで拡大されることが明示されている[3 ]。 しかし、このような請求に対する役員の責任は、一般的に当該役員の権限の範囲に限定される。

このような最近の判決を踏まえると、(特にデラウェア州の企業の)取締役と役員は、レッドフラッグが発生した際に、誠実に適切な対処をすべきである。 さらに、レッドフラッグに関する請求を行うためには、一般的に、取締役や役員の不作為が不誠実に相当する程度のものであるとの認定が必要であるところ ところ、取締役と役員は、彼らに対するレッドフラッグに関する請求が成功した場合、たとえ免責条項が2022年8月の第102条(b)(7)の改定により拡大されたとしても 、当該企業の定款に規定することが可能である第102条(b)(7)の免責条項によって免責されない可能性があることに留意する必要がある。

この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

(1) Boeing Co.の株主代表訴訟参照(C.A. No. 2019-0907-MTZ, 2021 WL 4059934 (Del. Ch., Feb. 1, 2021))

(2) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 278 (Del. Ch., March 1, 2023))

(3) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 255 (Del. Ch., January 26, 2023))

脚注

(1) Boeing Co.の株主代表訴訟参照(C.A. No. 2019-0907-MTZ, 2021 WL 4059934 (Del. Ch., Feb. 1, 2021))

(2) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 278 (Del. Ch., March 1, 2023))

(3) McDonald’s Corporationの株主代表訴訟参照(C.A. No. 2021-0324-JTL, 2023 Del. Ch. LEXIS 255 (Del. Ch., January 26, 2023))

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