英国裁判所における仲裁判断の執行に対する主権免責:ICSID条約とニューヨーク条約
直近の英国判例法では、投資家と国家間の仲裁判断の執行について、仲裁判断がICSID条約またはニューヨーク条約のいずれに基づくかによって、二つの経路が用意されている。
1978年国家免責法(State Immunity Act 1978)の下で、外国国家は、「事前の書面合意」により管轄権に服した場合などの特定の例外を除き、英国裁判所の管轄権から免責される。条約が事前合意に該当するかは解釈問題となる。
Spain v. Infrastructure Services Luxembourg Sarl訴訟において、英国最高裁は、スペインとジンバブエによるICSID判断の執行に対する訴えを全員一致で却下し、締約国にICSID判断の承認と執行を求めるICSID条約Article 54(1)は、「管轄権行使に対する国家同意の明白かつ明確な表現」であり、したがって承認および執行手続における主権免責の放棄にあたる、と判断した。
反対に、Devas (Mauritius) Limited v. India訴訟において、英国控訴院は、インドのニューヨーク条約批准は主権免責の放棄ではない、と判断した。ニューヨーク条約Article IIIの文言は、ICSID条約Article 54(1)と類似するものの、控訴院は以下理由で両条約を区別した。
- 文章:ニューヨーク条約Article IIIには、仲裁判断は「当該領域の手続規則に従って」拘束力を有し執行可能であるとの限定が付されているが、ICSID条約にはそのような限定はない。
- 構造:ICSID条約は、投資を確保し投資家を保護するために存在する一方で、ニューヨーク条約は、国家が関与するものに限らず、仲裁判断一般に適用される。
控訴院は、主権免責は国家の「手続規則」に明確に該当し、したがってニューヨーク条約Article IIIは、免責を排除するのではなく維持するものである、と結論づけた。
結論:ICSID判断の保持者にとっては、英国における執行経路がより明確になった一方で、ニューヨーク条約に基づく判断の保持者は、依然として、国家の書面による仲裁合意を別途証明しなければならない。このため、条約がICSIDと非ICSIDの双方を選択肢として認めている場合、投資家による仲裁フォーラムの選択が、執行上の実質的な重要性を持つこととなり、執行可能な資産や想定される執行地について、慎重な事前評価が必要となる。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
反対に、Devas (Mauritius) Limited v. India訴訟において、英国控訴院は、インドのニューヨーク条約批准は主権免責の放棄ではない、と判断した。ニューヨーク条約Article IIIの文言は、ICSID条約Article 54(1)と類似するものの、控訴院は以下理由で両条約を区別した。
- 文章:ニューヨーク条約Article IIIには、仲裁判断は「当該領域の手続規則に従って」拘束力を有し執行可能であるとの限定が付されているが、ICSID条約にはそのような限定はない。
- 構造:ICSID条約は、投資を確保し投資家を保護するために存在する一方で、ニューヨーク条約は、国家が関与するものに限らず、仲裁判断一般に適用される。
控訴院は、主権免責は国家の「手続規則」に明確に該当し、したがってニューヨーク条約Article IIIは、免責を排除するのではなく維持するものである、と結論づけた。
結論:ICSID判断の保持者にとっては、英国における執行経路がより明確になった一方で、ニューヨーク条約に基づく判断の保持者は、依然として、国家の書面による仲裁合意を別途証明しなければならない。このため、条約がICSIDと非ICSIDの双方を選択肢として認めている場合、投資家による仲裁フォーラムの選択が、執行上の実質的な重要性を持つこととなり、執行可能な資産や想定される執行地について、慎重な事前評価が必要となる。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
Related Lawyers
© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.
直近の英国判例法では、投資家と国家間の仲裁判断の執行について、仲裁判断がICSID条約またはニューヨーク条約のいずれに基づくかによって、二つの経路が用意されている。
1978年国家免責法(State Immunity Act 1978)の下で、外国国家は、「事前の書面合意」により管轄権に服した場合などの特定の例外を除き、英国裁判所の管轄権から免責される。条約が事前合意に該当するかは解釈問題となる。
Spain v. Infrastructure Services Luxembourg Sarl訴訟において、英国最高裁は、スペインとジンバブエによるICSID判断の執行に対する訴えを全員一致で却下し、締約国にICSID判断の承認と執行を求めるICSID条約Article 54(1)は、「管轄権行使に対する国家同意の明白かつ明確な表現」であり、したがって承認および執行手続における主権免責の放棄にあたる、と判断した。
反対に、Devas (Mauritius) Limited v. India訴訟において、英国控訴院は、インドのニューヨーク条約批准は主権免責の放棄ではない、と判断した。ニューヨーク条約Article IIIの文言は、ICSID条約Article 54(1)と類似するものの、控訴院は以下理由で両条約を区別した。
- 文章:ニューヨーク条約Article IIIには、仲裁判断は「当該領域の手続規則に従って」拘束力を有し執行可能であるとの限定が付されているが、ICSID条約にはそのような限定はない。
- 構造:ICSID条約は、投資を確保し投資家を保護するために存在する一方で、ニューヨーク条約は、国家が関与するものに限らず、仲裁判断一般に適用される。
控訴院は、主権免責は国家の「手続規則」に明確に該当し、したがってニューヨーク条約Article IIIは、免責を排除するのではなく維持するものである、と結論づけた。
結論:ICSID判断の保持者にとっては、英国における執行経路がより明確になった一方で、ニューヨーク条約に基づく判断の保持者は、依然として、国家の書面による仲裁合意を別途証明しなければならない。このため、条約がICSIDと非ICSIDの双方を選択肢として認めている場合、投資家による仲裁フォーラムの選択が、執行上の実質的な重要性を持つこととなり、執行可能な資産や想定される執行地について、慎重な事前評価が必要となる。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
反対に、Devas (Mauritius) Limited v. India訴訟において、英国控訴院は、インドのニューヨーク条約批准は主権免責の放棄ではない、と判断した。ニューヨーク条約Article IIIの文言は、ICSID条約Article 54(1)と類似するものの、控訴院は以下理由で両条約を区別した。
- 文章:ニューヨーク条約Article IIIには、仲裁判断は「当該領域の手続規則に従って」拘束力を有し執行可能であるとの限定が付されているが、ICSID条約にはそのような限定はない。
- 構造:ICSID条約は、投資を確保し投資家を保護するために存在する一方で、ニューヨーク条約は、国家が関与するものに限らず、仲裁判断一般に適用される。
控訴院は、主権免責は国家の「手続規則」に明確に該当し、したがってニューヨーク条約Article IIIは、免責を排除するのではなく維持するものである、と結論づけた。
結論:ICSID判断の保持者にとっては、英国における執行経路がより明確になった一方で、ニューヨーク条約に基づく判断の保持者は、依然として、国家の書面による仲裁合意を別途証明しなければならない。このため、条約がICSIDと非ICSIDの双方を選択肢として認めている場合、投資家による仲裁フォーラムの選択が、執行上の実質的な重要性を持つこととなり、執行可能な資産や想定される執行地について、慎重な事前評価が必要となる。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
Related Lawyers
© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.
ニュース
Publications
Jenner & Block Marks Equal Time’s 25th Anniversary of Celebrating Community
Jenner & Block released the 25th edition of Equal Time, the firm’s annual inclusion and engagement report centered on “Celebrating Community.”
September 23, 2026
Event
Associate Steven Arango to Speak at the Veterans' Legal Career Fair
On September 18, Associate Steven Arango will speak on a panel at the Veterans' Legal Career Fair (VLCF), the only legal career fair in the United States dedicated to veterans, active-duty service members, and military spouses.
September 18, 2026