売主は、「あらゆる点において正確である」との表明保証を求めるクロージング条件に要注意
最近、デラウェア州の裁判所は、HControl Holdings v. Antin Infrastructure Partners訴訟において、買主は、対象会社を2億5,000万ドルで買収する契約をクロージングさせることなく終了させることができる、との判断を下した。元従業員が21万5,000ドル相当の株式に関連した権利を有していたため、売主は、クロージング時においても、売主側の基本的表明保証(fundamental representations and warranties)は「あらゆる点において正確である」、というクロージング条件を充足する事ができなかったのである。
前提として、買収契約においてサイニングからクロージングまで期間を空けることが定められた場合、各当事者は、特に、クロージング日時点においても、表明保証が所定の正確性の基準を満たしていることを求める、表明保証の「ブリングダウン(bring-down)」というクロージング条件を充足させる必要があるのが通常である。
多くの場合、対象会社に関する「一般的な」表明保証の正確性の基準には、重要性(materiality)や重大な悪影響(Material Adverse Effect, MAE)の限定が加えられる。(特に)MAE基準は非常に高いハードルとなるため、売主にとっては取引の確実性を大きく高めることになる。しかし、当事者が、契約上「基本的表明保証」(対象会社の存続、資本構成、株式の所有権、売主の契約締結権限、一定の税務事項に関連した表明保証を含むことが多い。) として合意した表明保証については、クロージング時点においても高い正確性を求められることが多い。基本的表明保証に関するブリングダウンの基準(bring-down standards)としては、「あらゆる点において正確である」、「個別または全体として違反が軽微である場合(de minimis)を除き、あらゆる点において正確である」といったものが頻繁に用いられる。こうしたブリングダウンの基準(bring-down standards)は、通常、慣行を踏まえつつ、当事者間の交渉の結果異なるものとなるが、最近の判例ではこの基準の違いが重要となる可能性があることが示されている。
HControl訴訟で問題となった契約書においては、重要性(material)や軽微性(de minimis)の例外が設定されることなく、クロージング時点における、資本構成に関する表明保証を含む「基本的表明保証」がクロージング条件として定められた。売主は、何度も、この条項に重要性の限定を加えようと試み、これにより買主が契約のクロージングを拒否できるケースを大幅に限定しようとしていた。買主は、この売主の修正を繰り返し削除し、最終契約においては、クロージング時点において「基本的表明保証」が「あらゆる点において真実かつ正しい」ことが条件とされたのである。元従業員が21万5,000ドル相当の対象会社の株式について権利を有していることが明らかになった後、買主は対象会社の2億5,000万ドルでの買収を開始する義務はないと主張し、裁判所も最終的には、表明保証の厳格な遵守を定める上記のクロージング条件を執行し、買主がクロージングすることなく取引から「立ち去る(walk away)」ことを認めたのである。
この判決から、(1)M&Aのクロージング条件におけるブリングダウンの基準(bring-down standards)の違いや、当事者間のリスクがそれぞれの基準によってどのように配分されるかという点を理解することが重要であること、そして、(2)少なくともデラウェア州においては、極端または不公平と思える結果になるとしても、裁判所は契約の文言をそのまま執行する傾向にあること、が明確になったといえる。
売主としては、たとえ「基本的表明保証」であったとしても、クロージング時における表明保証については、少なくとも軽微な点において不正確であることは許容される基準が定められるよう懸命に交渉することが得策と考えられる。2023年6月のRestanca, LLC v. House of Lithium, Ltd., No. 2022-0690-PAF, 2023 WL 4306074訴訟での判決のように、HControl訴訟での判決が、他のデラウェア州の裁判所の判決においても踏襲されていることを踏まえると、特にそのように言える。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
多くの場合、対象会社に関する「一般的な」表明保証の正確性の基準には、重要性(materiality)や重大な悪影響(Material Adverse Effect, MAE)の限定が加えられる。(特に)MAE基準は非常に高いハードルとなるため、売主にとっては取引の確実性を大きく高めることになる。しかし、当事者が、契約上「基本的表明保証」(対象会社の存続、資本構成、株式の所有権、売主の契約締結権限、一定の税務事項に関連した表明保証を含むことが多い。) として合意した表明保証については、クロージング時点においても高い正確性を求められることが多い。基本的表明保証に関するブリングダウンの基準(bring-down standards)としては、「あらゆる点において正確である」、「個別または全体として違反が軽微である場合(de minimis)を除き、あらゆる点において正確である」といったものが頻繁に用いられる。こうしたブリングダウンの基準(bring-down standards)は、通常、慣行を踏まえつつ、当事者間の交渉の結果異なるものとなるが、最近の判例ではこの基準の違いが重要となる可能性があることが示されている。
HControl訴訟で問題となった契約書においては、重要性(material)や軽微性(de minimis)の例外が設定されることなく、クロージング時点における、資本構成に関する表明保証を含む「基本的表明保証」がクロージング条件として定められた。売主は、何度も、この条項に重要性の限定を加えようと試み、これにより買主が契約のクロージングを拒否できるケースを大幅に限定しようとしていた。買主は、この売主の修正を繰り返し削除し、最終契約においては、クロージング時点において「基本的表明保証」が「あらゆる点において真実かつ正しい」ことが条件とされたのである。元従業員が21万5,000ドル相当の対象会社の株式について権利を有していることが明らかになった後、買主は対象会社の2億5,000万ドルでの買収を開始する義務はないと主張し、裁判所も最終的には、表明保証の厳格な遵守を定める上記のクロージング条件を執行し、買主がクロージングすることなく取引から「立ち去る(walk away)」ことを認めたのである。
この判決から、(1)M&Aのクロージング条件におけるブリングダウンの基準(bring-down standards)の違いや、当事者間のリスクがそれぞれの基準によってどのように配分されるかという点を理解することが重要であること、そして、(2)少なくともデラウェア州においては、極端または不公平と思える結果になるとしても、裁判所は契約の文言をそのまま執行する傾向にあること、が明確になったといえる。
売主としては、たとえ「基本的表明保証」であったとしても、クロージング時における表明保証については、少なくとも軽微な点において不正確であることは許容される基準が定められるよう懸命に交渉することが得策と考えられる。2023年6月のRestanca, LLC v. House of Lithium, Ltd., No. 2022-0690-PAF, 2023 WL 4306074訴訟での判決のように、HControl訴訟での判決が、他のデラウェア州の裁判所の判決においても踏襲されていることを踏まえると、特にそのように言える。
この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。
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© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.
最近、デラウェア州の裁判所は、HControl Holdings v. Antin Infrastructure Partners訴訟において、買主は、対象会社を2億5,000万ドルで買収する契約をクロージングさせることなく終了させることができる、との判断を下した。元従業員が21万5,000ドル相当の株式に関連した権利を有していたため、売主は、クロージング時においても、売主側の基本的表明保証(fundamental representations and warranties)は「あらゆる点において正確である」、というクロージング条件を充足する事ができなかったのである。
前提として、買収契約においてサイニングからクロージングまで期間を空けることが定められた場合、各当事者は、特に、クロージング日時点においても、表明保証が所定の正確性の基準を満たしていることを求める、表明保証の「ブリングダウン(bring-down)」というクロージング条件を充足させる必要があるのが通常である。
多くの場合、対象会社に関する「一般的な」表明保証の正確性の基準には、重要性(materiality)や重大な悪影響(Material Adverse Effect, MAE)の限定が加えられる。(特に)MAE基準は非常に高いハードルとなるため、売主にとっては取引の確実性を大きく高めることになる。しかし、当事者が、契約上「基本的表明保証」(対象会社の存続、資本構成、株式の所有権、売主の契約締結権限、一定の税務事項に関連した表明保証を含むことが多い。) として合意した表明保証については、クロージング時点においても高い正確性を求められることが多い。基本的表明保証に関するブリングダウンの基準(bring-down standards)としては、「あらゆる点において正確である」、「個別または全体として違反が軽微である場合(de minimis)を除き、あらゆる点において正確である」といったものが頻繁に用いられる。こうしたブリングダウンの基準(bring-down standards)は、通常、慣行を踏まえつつ、当事者間の交渉の結果異なるものとなるが、最近の判例ではこの基準の違いが重要となる可能性があることが示されている。
HControl訴訟で問題となった契約書においては、重要性(material)や軽微性(de minimis)の例外が設定されることなく、クロージング時点における、資本構成に関する表明保証を含む「基本的表明保証」がクロージング条件として定められた。売主は、何度も、この条項に重要性の限定を加えようと試み、これにより買主が契約のクロージングを拒否できるケースを大幅に限定しようとしていた。買主は、この売主の修正を繰り返し削除し、最終契約においては、クロージング時点において「基本的表明保証」が「あらゆる点において真実かつ正しい」ことが条件とされたのである。元従業員が21万5,000ドル相当の対象会社の株式について権利を有していることが明らかになった後、買主は対象会社の2億5,000万ドルでの買収を開始する義務はないと主張し、裁判所も最終的には、表明保証の厳格な遵守を定める上記のクロージング条件を執行し、買主がクロージングすることなく取引から「立ち去る(walk away)」ことを認めたのである。
この判決から、(1)M&Aのクロージング条件におけるブリングダウンの基準(bring-down standards)の違いや、当事者間のリスクがそれぞれの基準によってどのように配分されるかという点を理解することが重要であること、そして、(2)少なくともデラウェア州においては、極端または不公平と思える結果になるとしても、裁判所は契約の文言をそのまま執行する傾向にあること、が明確になったといえる。
売主としては、たとえ「基本的表明保証」であったとしても、クロージング時における表明保証については、少なくとも軽微な点において不正確であることは許容される基準が定められるよう懸命に交渉することが得策と考えられる。2023年6月のRestanca, LLC v. House of Lithium, Ltd., No. 2022-0690-PAF, 2023 WL 4306074訴訟での判決のように、HControl訴訟での判決が、他のデラウェア州の裁判所の判決においても踏襲されていることを踏まえると、特にそのように言える。
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多くの場合、対象会社に関する「一般的な」表明保証の正確性の基準には、重要性(materiality)や重大な悪影響(Material Adverse Effect, MAE)の限定が加えられる。(特に)MAE基準は非常に高いハードルとなるため、売主にとっては取引の確実性を大きく高めることになる。しかし、当事者が、契約上「基本的表明保証」(対象会社の存続、資本構成、株式の所有権、売主の契約締結権限、一定の税務事項に関連した表明保証を含むことが多い。) として合意した表明保証については、クロージング時点においても高い正確性を求められることが多い。基本的表明保証に関するブリングダウンの基準(bring-down standards)としては、「あらゆる点において正確である」、「個別または全体として違反が軽微である場合(de minimis)を除き、あらゆる点において正確である」といったものが頻繁に用いられる。こうしたブリングダウンの基準(bring-down standards)は、通常、慣行を踏まえつつ、当事者間の交渉の結果異なるものとなるが、最近の判例ではこの基準の違いが重要となる可能性があることが示されている。
HControl訴訟で問題となった契約書においては、重要性(material)や軽微性(de minimis)の例外が設定されることなく、クロージング時点における、資本構成に関する表明保証を含む「基本的表明保証」がクロージング条件として定められた。売主は、何度も、この条項に重要性の限定を加えようと試み、これにより買主が契約のクロージングを拒否できるケースを大幅に限定しようとしていた。買主は、この売主の修正を繰り返し削除し、最終契約においては、クロージング時点において「基本的表明保証」が「あらゆる点において真実かつ正しい」ことが条件とされたのである。元従業員が21万5,000ドル相当の対象会社の株式について権利を有していることが明らかになった後、買主は対象会社の2億5,000万ドルでの買収を開始する義務はないと主張し、裁判所も最終的には、表明保証の厳格な遵守を定める上記のクロージング条件を執行し、買主がクロージングすることなく取引から「立ち去る(walk away)」ことを認めたのである。
この判決から、(1)M&Aのクロージング条件におけるブリングダウンの基準(bring-down standards)の違いや、当事者間のリスクがそれぞれの基準によってどのように配分されるかという点を理解することが重要であること、そして、(2)少なくともデラウェア州においては、極端または不公平と思える結果になるとしても、裁判所は契約の文言をそのまま執行する傾向にあること、が明確になったといえる。
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