デラウェア州衡平裁判所によるSB 21の初適用:Ayers v. Foley訴訟が取締役の独立性に関する初期的指針を示す

2026年6月15日、デラウェア州衡平裁判所は、Ayers v. Foley訴訟(C.A. No. 2025-0650-LWW)において判決を言い渡した。本判決は、上院法案21号(SB 21)による改正後のデラウェア州一般会社法(DGCL)第144条(d)(2)を解釈した初めての判決である。裁判所は、取締役が利害関係を有しないとの推定を強化した同条項について、DGCL第144条が定める利益相反取引のためのセーフハーバーに限られず、株主である原告が提訴前に取締役会への提訴請求を行うことなく提訴できるか否かを判断する場面(衡平裁判所規則23.1に基づく「提訴請求の無益性(demand futility)」の審査)においても適用される、と判示した。本判決は、原告がこの推定を覆すために何を主張しなければならないかについて、初期的な指針を示すとともに、実務上の教訓として次の3点を浮き彫りにしている。すなわち、問題となる取引を明確に画定すること、承認プロセスの独立性を客観的に示せる形にしておくこと、取締役による報酬の自己決定を別個のリスク領域として扱うこと、である。

背景:SB21による強化された推定

2025年3月に制定されたSB 21により、上場会社の取締役について、適用される取引所の独立性基準を満たすと取締役会が判断している限り(また、該当する場合には、支配株主からの独立性についても判断している限り)、当該取締役が当事者ではない取引に関しては、当該取締役は利害関係を有しない、との推定が生じる。この推定は「強化された(heightened)」ものであり、当該取締役がその取引について重要な利害関係を有すること、または、重要な利害関係を有する者と重要な関係にあることを示す「実質的かつ具体的な事実(substantial and particularized facts)」によってのみ覆すことができる。今年に入り、デラウェア州最高裁判所は、Rutledge v. Clearway Energy Group LLC訴訟(Del. Feb. 27, 2026)において、SB 21の合憲性を支持した。この憲法上の争いが決着したことにより、Ayers訴訟は、衡平裁判所にとってDGCL第144条(d)(2)を解釈する初めての機会となった。

事実関係

本訴訟は、Fidelity National Financial, Inc.(FNF)の取締役会に対する株主代表訴訟として始まった。原告は、2022年から2024年にかけて支払われた非従業員取締役の報酬、および、FNFの創業者であり非業務執行取締役会議長であるWilliam P. Foley IIに対する一度限りの5,000万ドル相当の株式付与という、2つの事項を争った。原告は、この2つの決定が単一の対価関係の一部であり、取締役会の過半数が、Foley氏との取締役職の重複関係、同氏が関与する他の取締役会から得た報酬、プロスポーツチームへの少数持分の共同投資、その他の事業上のつながりのために、同氏からの独立性を欠いていた、と主張した。

2024年10月14日の会議において、FNFの報酬委員会は、2024年の取締役報酬を承認するとともに、Foley氏への株式付与について、別途設置された関連当事者取引(RPT)委員会の承認を条件として、条件付きで承認した。その後、RPT委員会は、報酬委員会とは別に独自に会合を開き、その報酬アドバイザーの独立性や市場データを検討し、独自に法的アドバイスを得た上で、約2週間後に株式付与を承認した。

裁判所の判断

裁判所は、非従業員取締役への報酬と株式付与について、両者が同一の会議で審議されたとはいえ承認プロセスが異なっていたことから、これらを2つの別個の取引として扱った。また、裁判所は、原告が主張する対価関係を裏付ける具体的な事実が訴状において記載されていない、と判断した。先例のない問題として、裁判所は、DGCL第144条(d)(2)における推定は、DGCL第144条のセーフハーバーの範囲内にとどまらず、提訴請求の無益性の審査段階においても適用される、と判示した。裁判所は、立法府がDGCL第144条の他の箇所では限定的な文言を用いていたにもかかわらず、同(d)(2)項についてはそのような限定を設けなかったことを理由に、この限定の欠如は意図的なものである、と解釈した。さらに、裁判所は、「実質的(substantial)」とは定性的な基準であって定量的な基準ではなく、軽微または重要ではない多数の主張を積み重ねたとしても、その積み重ねのみによっては取締役の独立性を害する利益相反を立証することはできない、と説明した。

この基準を適用した結果、裁判所は、原告が主張する事情(Foley氏との取締役職の重複関係、報酬総額、少数持分の共同投資、その他の事業上のつながり)は、FNFの取締役会の過半数が独立性を欠いていたことを示す実質的かつ具体的な事実には当たらない、と判断した。また、裁判所は、取締役が責任を負う相当程度の可能性に直面しているとの主張も退けた。DGCL第144条(a)(1)のセーフハーバーは、FNFの定款上の免責条項と相まって、原告に対し、悪意に関する具体的な事実の主張を求めるものであり、訴状に組み込まれた委員会自身の記録は、かかる主張を裏付けないものであった。したがって、裁判所は、Foley氏への株式付与に関連する請求を却下した。

報酬の自己決定に関する請求については、結論が異なった。自らの報酬を決定する取締役は、取引の当事者であるため必然的に利害関係を有することになり、DGCL第144条(a)(1)の利害関係のない取締役に関するセーフハーバーは適用されなかった。被告らは、同報酬についてDGCL第144条(a)(2)に基づく利害関係のない株主の承認を得ていなかったため、代わりに会社およびその株主にとって公正な取引を保護するDGCL第144条(a)(3)に依拠した。裁判所は、この法定の公正性審査は、デラウェア州の伝統的な完全公正基準に沿うものであると判示した。訴答段階において、原告は、不公正な取引と不公正な価格の双方を十分に主張しており、報酬を承認した報酬委員会の委員に対する受託者義務違反の請求については、手続を継続することが認められた。裁判所は、報酬の承認に関与せず単に報酬を受領したにすぎない取締役に対する請求を却下したが、問題となった報酬を保持していたすべての取締役に対しては、関連する不当利得の請求を存続させた。

実務上の教訓

これら2つの判断(第三者間の取引については取締役に有利な推定が働く一方、報酬の自己決定については引き続き厳格な審査が行われる)により、ガバナンス・プロセスと文書化がこれまで以上に重要となっている。DGCL第144条(d)(2)の恩恵を受けようとする取締役会は、支配株主・支配グループの有無についての検討など、適用される取引所の基準に紐づいた、最新かつ十分に文書化された独立性判断を維持すべきである。関連する事項が短期間のうちに生じる場合には、真に別個の委員会、会議、アドバイザー、議事録を用いることで、取引が法的にも事実的にも別個のものであることを立証するのに役立つことになる。取締役による報酬の自己決定は、依然として別個のリスク領域である。すなわち、取引所基準に基づく独立性は、取締役が当事者となる取引について同取締役を保護するものではないため、企業は、引き続き独立した報酬コンサルタントを用いて報酬のベンチマーク調査を行い、報酬額に意味のある上限を設定し、十分な文書化を行い、かつ適切な場合には利害関係のない株主の承認を得るべきである。

この記事はJenner & Blockニュースレターに掲載されています。

© 2026 Jenner & Block LLP. Attorney Advertising. Jenner & Block LLP is an Illinois Limited Liability Partnership including professional corporations. This publication, presentation, or event is not intended to provide legal advice but to provide information on legal matters and/or firm news of interest to our clients and colleagues. Readers or attendees should seek specific legal advice before taking any action with respect to matters mentioned in this publication or at this event. The attorney responsible for this communication is Brent E. Kidwell, Jenner & Block LLP, 353 N. Clark Street, Chicago, IL 60654-3456. Prior results do not guarantee a similar outcome. Jenner & Block London LLP, an affiliate of Jenner & Block LLP, is a limited liability partnership established under the laws of the State of Delaware, USA and is authorised and regulated by the Solicitors Regulation Authority with SRA number 615729. Information regarding the data we collect and the rights you have over your data can be found in our Privacy Notice. For further inquiries, please contact dataprotection@jenner.com.

デラウェア州衡平裁判所によるSB 21の初適用:Ayers v. Foley訴訟が取締役の独立性に関する初期的指針を示す

2026年6月15日、デラウェア州衡平裁判所は、Ayers v. Foley訴訟(C.A. No. 2025-0650-LWW)において判決を言い渡した。本判決は、上院法案21号(SB 21)による改正後のデラウェア州一般会社法(DGCL)第144条(d)(2)を解釈した初めての判決である。裁判所は、取締役が利害関係を有しないとの推定を強化した同条項について、DGCL第144条が定める利益相反取引のためのセーフハーバーに限られず、株主である原告が提訴前に取締役会への提訴請求を行うことなく提訴できるか否かを判断する場面(衡平裁判所規則23.1に基づく「提訴請求の無益性(demand futility)」の審査)においても適用される、と判示した。本判決は、原告がこの推定を覆すために何を主張しなければならないかについて、初期的な指針を示すとともに、実務上の教訓として次の3点を浮き彫りにしている。すなわち、問題となる取引を明確に画定すること、承認プロセスの独立性を客観的に示せる形にしておくこと、取締役による報酬の自己決定を別個のリスク領域として扱うこと、である。

背景:SB21による強化された推定

2025年3月に制定されたSB 21により、上場会社の取締役について、適用される取引所の独立性基準を満たすと取締役会が判断している限り(また、該当する場合には、支配株主からの独立性についても判断している限り)、当該取締役が当事者ではない取引に関しては、当該取締役は利害関係を有しない、との推定が生じる。この推定は「強化された(heightened)」ものであり、当該取締役がその取引について重要な利害関係を有すること、または、重要な利害関係を有する者と重要な関係にあることを示す「実質的かつ具体的な事実(substantial and particularized facts)」によってのみ覆すことができる。今年に入り、デラウェア州最高裁判所は、Rutledge v. Clearway Energy Group LLC訴訟(Del. Feb. 27, 2026)において、SB 21の合憲性を支持した。この憲法上の争いが決着したことにより、Ayers訴訟は、衡平裁判所にとってDGCL第144条(d)(2)を解釈する初めての機会となった。

事実関係

本訴訟は、Fidelity National Financial, Inc.(FNF)の取締役会に対する株主代表訴訟として始まった。原告は、2022年から2024年にかけて支払われた非従業員取締役の報酬、および、FNFの創業者であり非業務執行取締役会議長であるWilliam P. Foley IIに対する一度限りの5,000万ドル相当の株式付与という、2つの事項を争った。原告は、この2つの決定が単一の対価関係の一部であり、取締役会の過半数が、Foley氏との取締役職の重複関係、同氏が関与する他の取締役会から得た報酬、プロスポーツチームへの少数持分の共同投資、その他の事業上のつながりのために、同氏からの独立性を欠いていた、と主張した。

2024年10月14日の会議において、FNFの報酬委員会は、2024年の取締役報酬を承認するとともに、Foley氏への株式付与について、別途設置された関連当事者取引(RPT)委員会の承認を条件として、条件付きで承認した。その後、RPT委員会は、報酬委員会とは別に独自に会合を開き、その報酬アドバイザーの独立性や市場データを検討し、独自に法的アドバイスを得た上で、約2週間後に株式付与を承認した。

裁判所の判断

裁判所は、非従業員取締役への報酬と株式付与について、両者が同一の会議で審議されたとはいえ承認プロセスが異なっていたことから、これらを2つの別個の取引として扱った。また、裁判所は、原告が主張する対価関係を裏付ける具体的な事実が訴状において記載されていない、と判断した。先例のない問題として、裁判所は、DGCL第144条(d)(2)における推定は、DGCL第144条のセーフハーバーの範囲内にとどまらず、提訴請求の無益性の審査段階においても適用される、と判示した。裁判所は、立法府がDGCL第144条の他の箇所では限定的な文言を用いていたにもかかわらず、同(d)(2)項についてはそのような限定を設けなかったことを理由に、この限定の欠如は意図的なものである、と解釈した。さらに、裁判所は、「実質的(substantial)」とは定性的な基準であって定量的な基準ではなく、軽微または重要ではない多数の主張を積み重ねたとしても、その積み重ねのみによっては取締役の独立性を害する利益相反を立証することはできない、と説明した。

この基準を適用した結果、裁判所は、原告が主張する事情(Foley氏との取締役職の重複関係、報酬総額、少数持分の共同投資、その他の事業上のつながり)は、FNFの取締役会の過半数が独立性を欠いていたことを示す実質的かつ具体的な事実には当たらない、と判断した。また、裁判所は、取締役が責任を負う相当程度の可能性に直面しているとの主張も退けた。DGCL第144条(a)(1)のセーフハーバーは、FNFの定款上の免責条項と相まって、原告に対し、悪意に関する具体的な事実の主張を求めるものであり、訴状に組み込まれた委員会自身の記録は、かかる主張を裏付けないものであった。したがって、裁判所は、Foley氏への株式付与に関連する請求を却下した。

報酬の自己決定に関する請求については、結論が異なった。自らの報酬を決定する取締役は、取引の当事者であるため必然的に利害関係を有することになり、DGCL第144条(a)(1)の利害関係のない取締役に関するセーフハーバーは適用されなかった。被告らは、同報酬についてDGCL第144条(a)(2)に基づく利害関係のない株主の承認を得ていなかったため、代わりに会社およびその株主にとって公正な取引を保護するDGCL第144条(a)(3)に依拠した。裁判所は、この法定の公正性審査は、デラウェア州の伝統的な完全公正基準に沿うものであると判示した。訴答段階において、原告は、不公正な取引と不公正な価格の双方を十分に主張しており、報酬を承認した報酬委員会の委員に対する受託者義務違反の請求については、手続を継続することが認められた。裁判所は、報酬の承認に関与せず単に報酬を受領したにすぎない取締役に対する請求を却下したが、問題となった報酬を保持していたすべての取締役に対しては、関連する不当利得の請求を存続させた。

実務上の教訓

これら2つの判断(第三者間の取引については取締役に有利な推定が働く一方、報酬の自己決定については引き続き厳格な審査が行われる)により、ガバナンス・プロセスと文書化がこれまで以上に重要となっている。DGCL第144条(d)(2)の恩恵を受けようとする取締役会は、支配株主・支配グループの有無についての検討など、適用される取引所の基準に紐づいた、最新かつ十分に文書化された独立性判断を維持すべきである。関連する事項が短期間のうちに生じる場合には、真に別個の委員会、会議、アドバイザー、議事録を用いることで、取引が法的にも事実的にも別個のものであることを立証するのに役立つことになる。取締役による報酬の自己決定は、依然として別個のリスク領域である。すなわち、取引所基準に基づく独立性は、取締役が当事者となる取引について同取締役を保護するものではないため、企業は、引き続き独立した報酬コンサルタントを用いて報酬のベンチマーク調査を行い、報酬額に意味のある上限を設定し、十分な文書化を行い、かつ適切な場合には利害関係のない株主の承認を得るべきである。

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